9月30日投開票の沖縄知事選は、いずれも無所属新人の玉城デニー前衆議院議員と、佐喜真淳前宜野湾市長が激しい攻防を繰り広げている。両陣営の戦いはヒートアップし、大規模な「応援団」を投入したり、「ローラー作戦」を展開したりと地方選挙とは思えないほどの総力戦が展開されている。「ついに追い抜いた」「こちらがリードしたままだ」…。双方の支持者からは真贋入りまじった情報が次々と飛び交い、両陣営は地上戦・空中戦・情報戦で火花を散らす。翁長雄志前知事の急逝に伴う注目選挙とあり、各メディアは情勢分析に躍起だが、沖縄の選挙は予想が難しい「マスコミ泣かせ」といわれる。様々な「世論調査」情報が流れる中、実態はどうなのか。言論ドットコム編集部は、過去の知事選で実施された世論調査などを踏まえ、分析を試みた。

■「互角」「激しく競り合っている」

 「互角のまま激しく競り合う展開」。共同通信は9月22、23日に琉球新報と実施した世論調査で、玉城氏と佐喜真氏の戦いをこのように表現した。読売新聞(9月21-23日実施)も「激しく競り合っている」と分析している。

 ここで、マスコミの「世論調査」について触れておきたい。メディアは、国政選挙や注目選挙などで世論調査を実施し、各種報道などに利用している。だが、調査で得られた「データ」そのものは公表しないケースがほとんどだ。「情勢分析」のニュースで「世論調査の結果に取材を加味して」と報じているところが多いのは、「数字」をひろうだけでは得られない「情報」も加えて総合的に分析しなければ、「実態」に近づくことは難しいと見ているためである。

 例えば、データで得られた数字では「大接戦」を意味する結果が得られていても、仮に「世論調査の電話がきた場合は相手候補を支持するよう回答せよ」と組織的な号令がかかっていた場合には、「結果」を見誤ることになる。逆に、データ上は大きく差が離れていても「本当に支持している候補者の名前は答えない」という人々が多ければ、得られたデータから「結果」を読み取ることは難しい。

 メディアは選挙報道の際、世論調査で得られたデータをもとに「判定会議」と呼ばれる会議を開き、そこで各記者が収集した「情報」を一通りテーブルにのせ、記事の根拠となる「総合的判断」に結びつける。「〇〇党の支援者の多くは期日前投票を済ませており、その数字が反映されているとは思えない」「投票率が上昇すれば、無党派層に人気の高い××候補が勝つ可能性が高い」などを披露しあい、「判定」が下されるのだ。

 そして、記事にする際は1つの「ルール」が存在する。それは、優勢にあると判断された候補者の名前は他の候補者よりも「先に」報じるというものだ。世論調査に基づく情勢分析記事以外は「届け出順」が原則だが、分析記事はこの「ルール」に従う。

 少し長くなったが、ここで先に示した2つの世論調査に基づく記事を見てみよう。「互角」と表現した共同通信は「玉城氏→佐喜真氏」の順で報じ、激しく競り合っていると分析した読売新聞も「玉城氏→佐喜真氏」の順番にしている。すなわち、上記の「ルール」に従えば、共同通信と読売新聞はともに玉城氏がリードしていると分析しているのである。

 世論調査で得られた「データ」で、どの程度の差があるのかはもちろん不明だが、調査に対して態度を明らかにしなかった人々がいることや、佐喜真氏を支援する与党が閣僚や党幹部に加えて、小泉進次郎筆頭副幹事長から小池百合子東京都知事まで投入したことなどを踏まえ、より踏み込んだ「判断」は保留しているとみられる。ちなみに、ある候補がかなり差をつけている場合は「優勢」「優位」、一定以上差をつけている場合は「先行」などと表現する。

■2014年知事選は「分析通り型」

 沖縄の「選挙分析」は、他の都道府県の選挙と比べて難しいというのが「永田町の常識」だが、過去の知事選報道はどうだったのか見てほしい。

 まずは、翁長前知事が当選した2014年11月16日投開票の知事選だ。

 沖縄の地元紙である琉球新報は、沖縄テレビと11月1、2日に実施した世論調査に取材を加味して情勢を分析。無所属新人の翁長雄志氏が「先行」し、無所属現職の仲井真弘多氏が「追っている」と表現した。

 もう1つの地元紙である沖縄タイムスは、朝日新聞と琉球朝日放送と合同で11月7、8日に実施した情勢調査を踏まえ、翁長氏が「優位」に立ち、仲井真氏が「追っている」と分析。これは、同紙が琉球放送と実施した告示前調査と同様の傾向が示されたと報じている。

 翁長氏が勝利した2014年知事選の結果は、以下の通りだ。

翁長雄志氏  36万820票
仲井真弘多氏 26万1076票

 投票率は64・13%で、2010年の前回知事選から3・25ポイント上昇したが、過去4番目に低かった。10月31日から11月15日までの期日前投票者数は19万7324人で過去最高を記録している。

《2 「2010年知事選は『〇〇型』」に続く》

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