新潮社は9月25日、月刊誌「新潮45」の休刊を発表した。同誌は8月号で「LGBT(性的少数者)の人々は生産性がない」などとした自民党の杉田水脈衆議院議員の寄稿を掲載。批判を浴びたものの、10月号でも「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題した特別企画を掲載し、杉田氏を擁護。作家や書店からも反発の声が高まり、佐藤隆信社長が「偏見と認識不足に満ちた表現があった」とのコメントを出す事態に追い込まれていた。今回、言論ドットコム編集部が注目したのは、新潮社が「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ」という点だ。インターネットで自由に「情報」が手に入る時代が到来し、雑誌や新聞といった紙媒体は「斜陽」といわれてきた中で、オピニオン誌はどうだったのか。「新潮45」をはじめ総合月刊誌の部数を追った。

 新潮社は9月25日の発表で、部数減が「編集上の無理」につながり、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めないと説明。「会社として十分な編集体制を整備しないまま『新潮45』の刊行を続けてことに対して、深い反省の思いを込めて、このたび休刊を決断しました」とした。1985年に創刊したオピニオン誌の編集体制に支障があるほどの部数とは、どのようなものだったのか。

 一般社団法人「日本雑誌協会」が公表しているデータを見てみたい。最新の2018年4月~6月の印刷証明付発行部数(平均印刷部数)は、16,800部となっている。ちなみに、他の総合月刊誌は次の通りだ。

「文芸春秋」(文芸春秋)371,333
「潮」(潮出版社)133,967
「WEDGE」(ウェッジ)131,150
「中央公論」(中央公論新社)24,667
「Voice」(PHP研究所)18,267
「新潮45」(新潮社)16,800

 これだけ見ると「新潮45」は、確かに「最下位」ではあるものの「Voice」と比べて、さほど変わりはないように見える。だが、新潮社が自ら触れた「部数減」という点に着目すると深刻さが伝わってくる。まずは、1年前の同じ時期のものを見てほしい。

(2017年4月~6月)
「文芸春秋」402,500
「潮」150,967
「WEDGE」124,297
「中央公論」26,833
「Voice」21,067
「新潮45」19,067

 「新潮45」はマイナス2,267部となっている。ただ、ここに挙げている総合月刊誌は軒並み部数が減少している。この傾向はずっと続いてきたのか。

(2016年4月~6月)
「文芸春秋」408,667
「潮」166,100
「WEDGE」125,061
「中央公論」28,167
「Voice」27,333
「新潮45」21,200

(2015年4月~6月)
「文芸春秋」430,000
「潮」179,167
「WEDGE」127,274
「中央公論」30,334
「Voice」29,267
「新潮45」24,434

(2014年4月~6月)
「文芸春秋」435,834
「潮」198,600
「WEDGE」130,471
「中央公論」30,000
「Voice」29,234
「新潮45」26,834

 過去5年分のデータを見ると、一部を除き、総合月刊誌は毎年部数を減らしてきている。「新潮45」は5年間でマイナス10,034部の減少だ。さらに前を見ると、

(2008年4月~6月)
「文芸春秋」619,000
「潮」396,667
「WEDGE」159,849
「中央公論」41,300
「Voice」34,933
「新潮45」42,833

 10年前は「新潮45」も4万部を超えており、「中央公論」や「Voice」を上回っている。だが、この時の部数に比べて現在は半分以下にまで大きく減少した。雑誌や新聞の収入源は購読料と広告収入であり、これだけの部数が10年で減れば経営上の問題に直結する。新潮社は今回、具体的な「編集体制」については明らかにしていないものの、10年間で半減した部数の前で十分なスタッフを割くのが困難だったことは想像に難くない。

 今回は、杉田氏の寄稿に端を発して「新潮45」が休刊になったわけだが、全体的に総合月刊誌の部数が減る状況下では、休刊を発表する出版社が相次いでも不思議ではない。

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言論ドットコム編集部

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