注目された内閣改造・自民党役員人事は、安倍晋三内閣で最多となる12人が初入閣を果たした一方、党幹部には首相に近い閣僚経験者がズラリと並ぶ布陣となった。安倍首相は第4次安倍改造内閣を「全員野球内閣」と名付けたが、メディアでは「論功行賞人事」「派閥配慮型内閣」などの声が飛び交う。先の自民党総裁選で自身を応援した人物を重用するのは当然でもあるが、「派閥」という観点ではどうだったのか。言論ドットコム編集部は今回、どこが「勝利」したのか検証した。

■「最大勢力」は麻生派ではない

 まずは、安倍首相が任命した19人の閣僚を派閥ごとに見てもらいたい。

① 安倍晋三首相(無派閥)
② 菅義偉官房長官(無派閥)
③ 石田真敏総務相(無派閥)
④ 麻生太郎財務相(麻生派)
⑤ 山下貴司法相(石破派)
⑥ 河野太郎(麻生派)
⑦ 柴山昌彦文部科学相(細田派)
⑧ 根本匠厚生労働相(岸田派)
⑨ 吉川貴盛農林水産相(二階派)
⑩ 世耕弘成経済産業相(細田派)
⑪ 石井啓一国土交通相(公明党)
⑫ 原田義昭環境相(麻生派)
⑬ 岩屋毅防衛相(麻生派)
⑭ 渡辺博道復興相(竹下派)
⑮ 山本順三国家公安委員長(細田派)
⑯ 宮越光寛沖縄・北方担当相(岸田派)
⑰ 平井卓也科学技術相(岸田派)
⑱ 茂木敏充経済再生相(竹下派)
⑲ 片山さつき地方創生相(二階派)
⑳ 桜田義孝五輪相(二階派)

 所属別に見ると、首相の盟友である麻生財務相が率いる麻生派の4人が最多となり、次いで二階俊博幹事長の二階派は3人に閣僚を増やしていることがお分かりだろう。

① 麻生派4人(前回の内閣改造から1人増)
② 二階派3人(2人増)
③ 細田派3人(増減なし)
④ 岸田派3人(1人減)
⑤ 竹下派2人(増減なし)
⑥ 無派閥2人(2人減)
⑦ 石破派1人(増減なし)
⑧ 公明党1人(増減なし)
⑨ 石原派0人(増減なし)

 閣内は麻生氏、党務では二階氏が首相を支え、連続3選に向けた動きを周到に準備してきた2つの派閥は安倍政権のまさに「軸」だ。学校法人「森友学園」や「加計学園」をめぐる問題で内閣支持率が急落した際も全面サポートしており、両派から多くの入閣があったのは当然でもある。

■最大勢力は「菅グループ」

 だが、10月2日に発足した第4次安倍改造内閣の顔触れを従来の「派閥」単位で見ては勢力図を見誤るだろう。その理由は、今回の内閣には「所属派閥」は異なっていても、それ以上といっても過言ではないほどに気脈を通じる「グループ」が存在しているからだ。

 それは菅官房長官を中心とする「菅グループ」である。菅官房長官は、若手議員を中心とする事実上の「グループ」をもっているが、それとも異なる集団だ。あえて言えば、若手議員のグループは「表のグループ」であり、今回は「裏のグループ」の繋がりが見える。では、誰が裏の「菅グループ」なのか。

 一見、当選回数が異なるので分かりにくいが、菅官房長官に閣内で近いのは吉川貴盛農水相と桜田義孝五輪相(ともに二階派)だろう。この3人は1996年の初当選同期で、自民党組織運動本部長に再任された山口泰明氏(竹下派)を含め、「四天王」と呼ばれることもあった。

 なぜ、派閥が異なる中で絆を固めてきたのかと言えば、菅官房長官の初当選後の所属は現在の竹下派だったからだ。山口氏はもちろん、吉川氏、桜田氏もかつて同じ派閥だった。この4人の絆は固く、頻繁に会合や電話で率直な意見交換を重ねている。

 また、菅官房長官は現在の岸田派にも所属したことがあり、根本厚労相や宮越沖縄・北方相、平井科学技術相と「同じ釜の飯」を食べた仲でもある。さらに、自民党神奈川県連を共に牽引してきた河野外相も1996年に初当選した同期だ。

 メディアでは「閣内は麻生派と二階派にねじ込まれ、党幹部は首相のお友達を入れた布陣」とも評されているが、実際に閣内で最大勢力といえるのは「菅グループ」であるのは間違いない。

 安倍首相は第2次政権が発足してまもなく、菅官房長官に対して「菅グループをつくったら良いよ」とお墨付きを与えていたが、その勢力は着々と拡大してきたことになる。

 早くもマスコミは「ポスト安倍」に注目し、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長、河野外相、小泉進次郎前筆頭副幹事長の名前をあげることが多いが、その流れは「キングメーカー」になるだろう菅官房長官の一手に大きく影響されるだろうことは想像に難くない。

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言論ドットコム編集部

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