1.日本の問題点

 毎年20兆円以上の赤字国債を発行した財政出動による予算も、団塊の世代が後期高齢者になる2025年までには、社会保障改革を行い、全体予算の3分の1を占める社会保障費への予算配分の偏りを修正することが必要になっている。

 安倍晋三首相も次の3年でアベノミクスを修正して、社会保障改革を行い、予算の偏りを修正すると言っている。未来投資会議でも、その方向が示されたが、この改革は高齢者層の反発も予想でき、そう簡単ではない。

 しかし、このまま現行の社会保障制度を維持することもできない。年金制度、後期高齢者医療制度共に、健康年齢が60歳程度の社会でできた仕組みであるが、現在、健康年齢は75歳に著しく伸びている。後期高齢者の年齢は85歳でもよいほどであるし、年金を貰っていた期間が10年程度で亡くなっていた過去を見ると、現在男性の寿命も80歳以上になり、70歳からの年金でもよいことになる。

2.現在の予算配分

 政治は予算配分を決めることであり、現在は得票率が高い高齢者への配分が高い。政治に影響力を持つのは投票率の高い老人層で、政治力を持っているからである。

 しかし、これ以外への配分が年々低くなり、基礎研究費も年2%も削減されて、今後ノーベル賞を取る研究者がいなくなるとiPS細胞研究の山中伸弥教授も警告する。

 このため、予算削減で大学教育の質が悪くなり、基礎研究ができなくなり、日本の将来の産業の芽を失くしているし、公共工事も減り日本の災害での脆弱性が高くなっている。北海道のブラックアウトや東広島市の土砂災害など、日本の脆弱性を大規模災害が暴き始めている。今度も地方の人口減少や地球温暖化で、脆弱性を突く大型の災害が降りかかることが心配である。

 防衛費も5兆円程度であるが、日本を取り巻く環境は悪化して、中国の近傍にある日本を守るためには、防衛費も増額が必要になっている。

 そして、長島昭久衆議院議員が提唱する「日本版ネウボラ」などの子ども育成支援でも多額の予算が必要になるが、今のままでは、その予算は確保できない。もちろん、消費税の増税で5.6兆円ぐらいの増収になるが、財政赤字の20兆円の穴を埋める必要があり、育成支援に、増収の半分の2兆円程度の予算をつけることしかできない。

 このため、全体的な予算配分を見直さないと、この本格的なネウボラの予算は確保できないことになる。

3.予算配分見直しの難しさ

 今、予算の3分の1が社会保障費であり、それ以外の予算は年々削減されているので、この社会保障費予算分の見直しなしには、ネウボラの予算を確保できない。

 しかし、予算配分の見直し議論が難しいのは、選挙で負ける可能性がある国会議員が言い出せないことで、予算配分見直しができていないことである。

 将来、投資会議のメンバーは、民間の有識者であり、特に会社社長などが多く、ある程度の反発が出るであろう議論もできるが、それを実際に法案にする国会議員がどれほど、その見直しに賛成するかによって決まる。

 特に野党は、与党が法案を出せば、高齢者を味方につけるべく反対に回ることが見えている。次の選挙で70歳への年金見直しなどの公約を掲げれば、与党は大敗退の可能性がある。

 しかし、これでは予算配分が今のままであり、高齢者が増えていくので、日本の将来投資が減り、過去の報酬が大きくなり、日本の未来はなくなってしまうことになる。

4.与野党の賛成が必要

 このため、与野党は真剣に議論をしないといけないし、この政策は国会議員全員賛成などの取り決めが必要になる。野党も反対しないことである。

 反対を抑えるために、今政府がやっている総活躍社会というネーミングにして、高齢者も働いてもらう環境を整備することで、ある程度の人が70歳まで働くことで、予算の増額を少なくすることであるが、抜本的な改革は難しいように思う。

 このため、野党与党の真剣な議論をしていくしかない。

 そうすると、公明党も反対する憲法改正の議論は後送りした方が良いことになると思う。

 さあ、どうなりますか?

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日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

1975年、東工大制御工学科卒。日本電信電話公社に入社し、つくば博覧会協会で街づくりを経験。通信研究所で人工知能など最先端のコンピューター技術の開発、IBMで米国企業文化に触れる。NTTデータで省エネ技術や米国、中国、インドなどでソフト開発を行い、カントリーリスクから国際問題を研究した。その後同研究所主宰。 1999年から「国際戦略コラム」を主催。国際関係や日本文化を論理的な視点で冷静に評論中。有料メルマガは、まぐまぐ大賞の経済政治分野で2位。
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