10月2日の内閣改造人事は、政権浮揚にはつながらず「不発」に終わったとの見方が強い。若手のホープである小泉進次郎前筆頭副幹事長らの入閣は見送られ、当選回数の多い入閣待機組からの起用が目立つ「在庫一掃セール内閣」などと冷めた視線が向けられている。唯一の女性閣僚となった片山さつき地方創生担当相には早速、挨拶代わりと言わんばかりに「文春砲」が炸裂。他にも「政治とカネ」問題や女性スキャンダルが指摘される自民党議員が相次いでいる。なぜ今回の内閣改造は「失敗」したのか。言論ドットコム編集部は、その原因を探って永田町を歩いた。

 2012年12月の第2次安倍晋三政権発足後、最多となる12人が初入閣を果たした内閣改造は今回で5回目だ。安倍首相は「全員野球内閣だ」と胸を張るが、世論は冷めた見方をしている。

 産経新聞とFNNの合同世論調査によると、内閣改造と自民党役員人事を「評価しない」との回答は6割近くに上っている。通常、改造直後は「ご祝儀」として上昇する傾向がある内閣支持率も低下。こうした数字は各種メディアの調査で共通してみられている。

 内閣改造を「評価しない」との各種世論調査結果を見ると、

朝日新聞 50%
共同通信 45.2%
読売新聞 45%
日経新聞 44%

となっている。

 今回の人事について、全国紙の自民党担当記者はこう酷評する。「誰が見ても『なぜ、こんな人が大臣になるのか』という人も入閣している。安倍首相は最後の任期だから入閣待機組に配慮したのだろうが、あまりにもお粗末な人事だった」。他の民放政治部記者が苦笑するのは、「紅一点」となった片山地方創生担当相の起用だ。片山氏と言えば、歯に衣着せぬ発言が物議を醸したこともあるが、頭脳明晰の元大蔵官僚、舛添要一元東京都知事の元妻としても知られる。苦笑の理由は何なのか。

 「片山氏は内閣改造・役員人事が近づくと、毎回、露骨ともいえる『猟官運動』を繰り広げることで有名。有力議員や首相に近い人物に自分の起用を求めるように次々と電話をかける。今回もこうした電話をして実を結んだのかは不明だが、多くの議員は入閣に驚いたのではないか」と語る。

 目玉閣僚となった片山地方創生担当相だが、注目を浴びたのは10月18日の「洗礼」だった。同日発売の「週刊文春」が国税庁への「口利き」疑惑を報じたのだ。片山氏は「口利きしたこともないし、100万円を受け取ったこともない」などと否定し、「事実誤認」を強調した。詳細についての回答は避けているが、訴訟の準備を理由にしている。

 ある閣僚が声を潜めて語る。「片山氏の入閣を安倍首相に要求したのは、『あの男』だったから断れなかったと聞いている」。片山氏は二階俊博幹事長が率いる「二階派」であり、党ナンバー2を引き続き担う剛腕幹事長が安倍首相に押し込んだ、との見方も出ていた。だが、この閣僚が語った「あの男」とは、今回の自民党総裁選でその動向が注目された人物というのだ。

 その男の名は「吉田博美」。自民党参議院幹事長として再任された「参議院のドン」だ。所属する竹下派の中で安倍首相に近い存在だが、先の総裁選では、吉田氏が「政治の師」と仰ぐ「かつてのドン」青木幹雄元参議院議員会長の要請を受けて石破茂元幹事長の応援に回った。

 別の自民党担当記者が解説する。「片山大臣の入閣を首相官邸に迫ったのは、吉田氏と言われている。吉田氏は『参議院のドン』として、一定数を入閣させる『参議院枠』を差配してきた。片山氏もその枠で入閣したのだろう」。

 そして、前出の閣僚が補足した。「吉田氏が片山大臣の起用を求めたことに官邸サイドは当初戸惑ったが、『参議院枠』を拒否すれば、総裁選で対抗馬の応援に回った『吉田氏の言うことはきかない』という誤ったメッセージにつながる可能性があった。官邸はしぶしぶ入閣要請にOKしたようだ」という。

 その吉田氏は10月9日の記者会見で、改造後に内閣支持率が上昇していないことについて「全員野球の精神でやっていけば必ず上がる」と語ったが、今回の改造人事は「なぜ、この人物が」という閣僚が他にも入っており、「失敗例」と揶揄する声は続く。

 政府・与党は10月24日召集の臨時国会に向けて立て直しを急いでいるが、内閣改造後まもなく渡辺博道復興相や工藤彰三国土交通政務官ら政務三役の「政治とカネ」問題などが相次いで報じられており、野党の追及は必至だ。いよいよ悲願である憲法改正に向けたプロセスに入るという段階で飛び出した問題の数々に、安倍首相はどのように対応していくのか。その「危機管理能力」に注目が集まる。

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言論ドットコム編集部

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