言論ドットコム編集部は今回、現役の国家公務員と共に【イマドキの公務員シリーズ】をスタートしました。何かと話題になることが多い「国家公務員」について、なるべく平易な言葉で、わかりやすく、行政のあり方の議論の材料となるようなものをお伝えしていきたいと思います。第2回は、いわゆる「補助金」ってなんだろう?です。

■補助金とはそもそも何か?

 役所に尋ねるビジネスマンの中には「補助金のメニューはなにかないですか?」とおっしゃる方が散見されます。または、政治家の方から「うちの地元の企業で○○の事業をやっており、補助金などがあれば情報提供していただきたい」という情報提供依頼もあります。

 そもそも、補助金とは政府が民間部門に対して行う貨幣を配布することが定義ですので、そんなに都合よく補助金が受け取れるものではないです。

 他方で、多くの方は広い意味での補助政策全体(減税措置や技術開発など)を「補助金」と言うことが多い印象です。例えば、政策に沿った企画・技術開発だと費用の半額が支給されるような類です。本稿では「補助金」をこの意味で使っていきたいと思います。

■補助金の種類

 分野によって対象は様々ですし、国レベル、都道府県レベル、市町村レベルと補助金の申請対象先によっても異なります。概して額は、

国>都道府県>市町村

です。
 
 特定の行動を実施してもらうために、何か書類を提出すると「減税」されるケースや、「FS事業」「技術実証試験」と称して特定の技術のFeasibility study(導入可能性試験)や開発促進を促すケース。これは競争型のものです。「機器導入促進事業」と称して、例えば省エネの機器を導入すると費用の30%を補助しますというもの等いろいろ。

 実際に事例を見て考えていきましょう。

■事例:国レベル 文科省 「私立大学研究ブランディング事業」

 少し前に、文部科学省で佐野太元局長が逮捕されるという事件がありました。この際には「私立大学研究ブランディング事業」というのが取り上げられて、本事業で佐野氏が大学側に便宜を図る見返りに、この大学に自分の息子に下駄をはかせてもらったということが報道されています。

 この事件の詳細な真相は筆者も不明ですが、比較的新しい事例なので取り上げたいと思います。これは上述の中で言えば、「FS事業」や「実証事業」に近く、取り組みのサポートというメニューになります。

文部科学省HPより

 これはいわゆる「ポンチ絵」というもので、各省庁が財務省に予算要求をしたり議員の方々に1枚で概要を説明するために、文字をたくさん入れ込んだ資料のことを言います。

 この資料には大きな方向性があり、これを具体化した公募要領等がその後にでてくるということとなります。筆者がこの資料から受け取ったイメージは以下の通りです。

(現職の着眼点)
●予算規模は55億円ですが、種々の予算を含んでいるので補助金はその内数。50件採択で5年で1~1.5億円程度の補助なので、55億円のほとんどが補助金。

●昨今の文科行政を見ていると、タイプAは教育型の大学、タイプBは研究型の大学。あまり好きな言い方ではないですが、大学入試偏差値の高い大学がBの傾向があり(早稲田、慶応など)、そうでないとAの傾向があるでしょう。

●事業体制と事業内容で評価される。評価は外部有識者の委員会を設置。行政事業レビューシートを見るとお金の流れが追えそうだという印象。

■ビジネスマン向けの着眼点

 この種の補助金については筆者の立場からすれば、その政策的な意図をしっかり理解している主体が採用されることが嬉しいです。他方で、政策的な意図の理解は多くの方にはコミュニケーションなしには難しいというジレンマもあります。

 行き過ぎたコミュニケーション&不正につながった例は上述の佐野氏のケースでしょう。他方で、一切のコミュニケーションがなく提出されて全然意図したものが出てこなければ、その補助金は失敗と言わざるを得ないです。

 その意味では、この種の公募があった際には「うちの案件はどうですか?」という言い方には応じてもらえないでしょうが、政策的な意図を確認しておくのは最低限まずやるべきことだと思います。

 加えて、担当者が関心をもてば、こういう企画や技術開発をやっています、という話の意見交換の場が持てる場合もあります。その中で政策の方向性を見定めるのも1つです。

 裏技的なことですが、省庁には民間企業からも多くの出向者がいます。その出向者を通じて昨今の政策の方向性を確認するのも良いでしょう。

 また、筆者の個人的な感想ですが、概ね1次審査は書類審査、2次審査は外部有識者の前でプレゼン、ということが多いかと思います。プレゼンで失敗するような事例は以下の通りです。

●「うちはこんな想いがあり、うちの会社はすごいんだ」と言ってしまうパターン。すばらしいアイデア・技術を持っている中小企業の社長さんに多いと思います。想いが空回りしてしまいます。

⇒有識者はまんべんなくいろいろな分野の人を設置します。たいていは国の検討会や審議会のメンバー経験者ですが。その人らにわかるように、かつ政策の方向性に合ってしまうというのを言葉できちんとアピールするほうがよろしいかと。

●「この技術はXXでYYで…」と細かい技術論などを言ってしまう学者肌の理系の職員。事実をただ事実のまま言えばいいと思ってしまうケースです。

⇒この種のプレゼンはメインスピーカーは全体をまんべんなく言えるタイプを配置して、サポートに細かいのに詳しい人がやるべき。この種の公募は細かい点の良しあしを競うというよりは、まず大きな政策の方向性にあっているか、実現可能性があるか、他にない点があるかというのをパッケージでアピールできるかです。役所が好きなパッケージという浅く広く的確にというのは外さないほうが無難です。

■『読者の皆様に問いたい点』

 今回は、昨今の文科省の逮捕事件の裏にあった補助金の話でした。文科省の逮捕された方のこれらの行為は大変遺憾ですが、他方で上述した通り、政策の意図をどうやってうまく伝えるのか?というのは悩ましい問題で、すばらしい素材・アイデア・技術がプレゼンがダメで通らないことも多々あり、一般的な注意点を整理してみました。

 あとは、やや理想論ですが、多くの方が政策に関心を示し理解してもらいつつ、こういうソリューションもあると民間セクター側から発信する等、風通しの良い議論ができればいいのにとも思います。
 2回目はこのくらいにしたいと思いますが、読者の皆様におたずねしたい点を最後に記載させていただきます。

 「補助金」にどんなイメージをもっていましたでしょうか?取れたらラッキーとか、国の補助金はめんどくさいとか、いろいろな意見があると思います。そういう率直な声をうまく反映していければ、この国の社会コストや生産性に良い影響もでるのかもしれません。

 あとは「そもそも論」としては、「google」や「amazon」などは国の補助金出てきた企業でもないですが、多くの人の生活になくてはならないものとなっています。そういう新しい価値の創造には国はどうやってお手伝いできるのか?というのは行政官も悩ましいところだと思います。
 
 ではでは、このへんで。

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