この1年強の都民ファーストの会東京都議団の活動を振り返った次には、今後、私たちがどのような方向性を目指すべきか考える必要がある。非常に壮大なテーマであり、所属議員のそれぞれに独自の考え方があるところだろう。私は、現在の政治の対立軸は、しばしば政治学の教科書等に出てくる「右」か「左」ではなく、現状維持的発想の「今」か、明日を見据えて創造的取組を進める「未来」かにあると考えており、この問題意識から、本年3月の一般質問において、東京都において将来世代の利益を意識した政策形成を行うべきとの問題提起を行ったところである。したがって、私は、都民ファーストの会も「東京の未来をつくる」という視点を前面に押し出すべきと考えているが、その認識に至った背景を以下で説明することとしたい。

(1) 「平成」とはどのような時代であったのか

 時代の移り変わりを示す1つの大きなものとして元号があるが、来年で平成から元号が変わることが予定されている。では、この平成の30年間はどのような時代であったのか。昭和59年生まれの現在34歳で、物心がついた頃に平成が始まり、いわば平成の時代とともにこれまでの人生を歩んできた私は、以下のように捉えている。

 まずは経済について述べたい。私が小学生低学年の頃、テレビのニュースでは「バブル崩壊」というフレーズが連日、飛び交っていた。当時の私は「バブル=泡」という認識しかなく、なぜ「泡」のことが連日報道されているのか、一体世の中で何が起きているのか理解できなかった。

 今、振り返ってみると、平成元年(1989年)12月29日に、日経平均株価は史上最高値の3万8915円を記録し、平成元年当時の世界時価総額ランキング上位50社のうち、実に32社を日本企業が占めており、まさしく「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の全盛期が平成の初頭であった。

 その後バブルが崩壊し、平成も30年まで経過した。世界各国はその間も経済成長を続けているが、日本は未だ平成元年の株価を超えられていない。また、平成30年度の世界時価総額ランキングの上位50社をみると、日本企業で入っているのはトヨタ自動車のわずか1社のみである。この平成の30年間で、日本経済の世界的な地位は大きく低下したと言わざるを得ない状況である。

 次に、社会情勢に関する以下の文章を読んでいただきたい。

 「近年、女性特に有配偶女性の職場進出が進み、女性の就労と出産・子育ての両立が大きな課題となってきている。どのような家庭に対してもその形態に応じ必要な子育て支援を行うという観点から、母親が働いている家庭については、就労と出産・子育ての両立支援の一層の充実を図っていくことが必要である。」

 「現に就労している女性が、家庭で子育てに専念できることを選択できるようにするためには、女性が子育てのために休業できたり、一時退職しても、再び就労できるような環境を整備することが必要である。」

 「女性のみに子育ての負担を負わせることなく、両親が共同して子育てをすることが可能となるような環境づくりを進めていくことも必要である」

 これらの記述は、平成元年版「厚生白書」中の記載である(第1編第1章第3節1(1)「子育て家庭の支援」)。平成30年現在の現状分析と言われても全く違和感はないのではないか。

 平成元年(1989年)には合計特殊出生率が戦後最低の1.57を記録し、「1.57ショック」と言われたとのことである。合計特殊出生率はその後も下降線を描き、2005年には史上最低の1.26を記録した。その後は持ち直したものの、2017年では1.43であり、平成元年時点の数字を上回ることができていない。

 この平成の30年間、子育て家庭の支援・少子化対策について、何も行われてこなかったわけではないとは認識している。しかし、状況を抜本的に好転させるレベルの「本気」の対策は、行われてこなかったのではないかという疑問は否定できない。

 次に、国家財政について確認してみたい。国の借金を示す長期債務残高は、平成元年は約191兆円であったが、平成30年度末には約915兆円に達する見込みとされている。つまり、この平成の30年間で国の借金は4.5倍超に膨れ上がったことになる。ある経済学者の試算によれば、今、日本で生まれた幼児はその瞬間から約5000万円もの借金を背負って生きていくことになるとされており、この状況を「財政的幼児虐待」と評している。

 これらの課題のうち、経済政策は喫緊の課題として取り組まれてきたものと理解しているが、私は、現状の日本銀行の異次元緩和によって得られた時間的猶予が、日本が稼げる体質へ構造転換するという本質的な課題解決のために適切に用いられてきたのか、疑問を有している。また、少子化対策や国の借金については、平成の初期の頃から将来の大きな課題になると認識されながらも、対症療法的な対策にとどまってきたのではないか、疑問を禁じ得ない。

 平成の30年間とは、社会がなだらかな下降線を下っていくことが予測されつつも、本質的な対策が行われることなく現状維持的・対症療法的な対策にとどまり、あらゆる課題が先送りされてきた時代と評価されてしまうのではないかと私は危惧している。少子化対策や国の借金削減等は、今を生きる世代にとっては直接的なメリットを感じづらいのかもしれないが、平成から次の時代に移行する今こそ、近視眼的・対症療法的な政策ではなく、長期的視点に立った、未来志向での政策が必要と考える。

(2) ポスト平成の東京の未来像

 このような基本的な問題意識に立脚し、具体的に都政ではどのような政策を進めていくべきか。対症療法的な現状維持の縛りを乗り越えるには、大きな「きっかけ」が必要であるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(「東京2020大会」)はまさしく、その「きっかけ」になるものである。

 東京2020大会の開催を成功させることは当然であるが、大会自体は短期間で終わってしまう。都民の多額の税金が投入される以上、東京2020大会のレガシー、都民への利益、大会後の東京のあるべき未来像をあらためて磨き上げ、東京2020大会を東京都の課題解決の大きなきっかけとするための取組を加速していかなければならない。

 バリアフリー化、多言語対応など、既に多くの具体的取組が進行しているが、東京2020大会のレガシーを検討するということは、2020年のその先の、東京の未来像について真剣に検討するということである。私は、東京2020大会のレガシーを検討することで、政治の発想の時間軸を、「今」から「未来」へ転換していかなければならないと考えている。

 現状維持的ではなく、課題の抜本的解決のために「未来」への投資が必要との観点から、私が今後、重要と考えている政策課題は以下の通りである。私自身、議員生活は1年強に過ぎずまだまだ勉強中の身であり、今後しっかりと肉付けし実現に向けて取り組んでいきたい。

・少子化対策

 東京都の合計特殊出生率は、全国最低の1.24 %(平成28年度)。未来の社会の担い手を育成するという観点から、子育て世代だけではなく、あらゆる世代の利益になる政策であるという認識で進める必要。

・教育投資の拡充

 外国語教育、ICT環境の充実など21世紀型能力への対応が必須。良好な教育環境は世界中からヒトを引き付ける都市の大きな魅力の一つ。

・フレイル対策

 健康な状態と要介護状態の中間地点である「フレイル」(虚弱)。フレイルの進行を食い止め、健康な状態に戻るための介護予防・健康増進により健康寿命を延ばし、支えられる人から共に支え合う高齢者像へ。

・生産性の向上

 日本の一人当たりGDPは20位前後。女性・高齢者の就業促進、ICT化、テレワーク等による生産性の向上や、成長を生み出す新産業への積極的な支援が必要。

The following two tabs change content below.
東京都議会議員 山田ひろし
東京都議会議員(三鷹市選出)。都民ファーストの会東京都議団 政務調査会長代行。1984年生まれ。東京大学法学部卒・米国コロンビア大学ロースクール法学修士。弁護士・ニューヨーク州弁護士。