9月の自民党総裁選で3選を果たし、超長期政権への道を走る安倍晋三首相に支持層である保守派から「異論」が飛び出している。第2次安倍政権の発足から6年近くが経ったものの、首相が掲げる憲法改正や拉致問題の解決に結び付いていない苛立ちもあるとみられるが、保守層に不満が生じているのは「対中国」と「移民政策」への姿勢にあるようだ。なにがなんでも「安倍首相支持」という人々はさておき、なぜ支持層から警鐘が鳴らされているのか。言論ドットコム編集部は、その背景を追った。

■「安倍応援団」から厳しい視線

 保守派のリーダーとして君臨してきた安倍首相は、いわゆる「保守論壇」のオピニオンリーダーたちの強力な後押しに支えられ、保守系メディアやSNS上で絶大な人気を維持してきた。固定電話(一部は携帯電話も対象)が中心のマスコミ各社による世論調査では、内閣支持率が一時3割を切る窮地もあったが、ネット上の支持率は高水準を保っている。ここまでコアの支持層による下支えが続いているのは、日本の政治であまり見られなかった。

 だが、ここにきて異変が生じている。それは、コアの支持層である保守派から次々と「苦言」が出てきているのだ。中でも、安倍政権を一貫して擁護してきたはずの産経新聞が厳しい論調をみせている。産経新聞といえば、「自民党」は批判しても、「安倍晋三首相」は批判しない、とまで揶揄された新聞だ。

 日中首脳会談 「覇権」阻む意思が見えぬ 誤ったメッセージを与えた

 産経新聞は10月27日付の社説「主張」で、訪中した安倍首相と習近平国家主席や李克強首相との会談に関し「成果とする関係改善は、日本が目指すべき対中外交とは程遠い。むしろ誤ったメッセージを国際社会に与えた」と指弾。「軍事や経済などで強国路線を突き進む中国に手を貸す選択肢はあり得ない。ここがうやむやなまま、友好ばかりが演出されたことを懸念する」と批判した。

 安倍首相は、10月に首脳として7年ぶりに訪中し、「競争から協調へ」をキーワードに日中関係を新たな時代に押し上げていく考えを表明。日中首脳会談では、通貨交換協定(スワップ)再開や第三国でのインフラ開発協力、中国人へのビザ緩和などで合意した。こうした動きに産経は「いかにも前のめりである」と批判。「日本は欧米とともに対中包囲網を強めようとしてきたはずだ。これとの整合性はあるのか」と疑問を投げかけ、「ムードに流された関係改善は、砂上の楼閣に等しい」と結んだ。

 新聞に掲載されている安倍首相の動静を調べると、産経新聞は訪中直前の10月24日、19時すぎから東京・赤坂の日本料理店で、同社の有元隆志正論調査室長、石橋文登政治部長、阿比留瑠比論説委員が安倍首相と会食している。このうちの一人、首相に最も近い記者とされる阿比留氏はコラム記事「【阿比留瑠比の極言御免】中国には譲歩しないことが肝心」の中で、中国との距離感に関して首相が「別にこちらが前のめりということではない。一帯一路の件は、リップサービスをしているだけだ。中国にカネをやるわけでも出すわけでもない」と周囲に漏らしていることを紹介。首相の姿勢は「全くぶれていない」とカバーしたが、社を代表する「社説」がそのわずか3日後に首相の対中姿勢に苦言を呈している点は面白い。

《2 「保守系論客からも『戸惑い』に続く」》

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