主題2:日本人は我が国のAI研究資産に誇りを持ち英米の後追いをするな

 メカニカルな身体を持った「人工汎用知性」(AI)の開発を目指す開発技術競争において、上記の日英米比較論は「日本人は自国のAI研究資産に誇りを持て。英米の後追いをするな」というメッセージに結実することになります。

 なお、本連載シリーズでこれから取り上げていく(日本と英米それぞれの)「言語創発AI」の学術論文について、技術的な詳細は人工知能研究者と人工知能プログラマに向けた小野寺の以下のスライドで網羅的に記述しています。

・[スライド] 「Thinking Machineに向けて –DeepMindのLanguage evolution論文を中心に: AIによる概念と推論ロジックの自律獲得–

 本連載シリーズでは、このスライドで取り上げた次の論文を技術的な詳細には踏み込まずに、研究の問題設定と技術の進展状況を紹介することに力点をおく目線で紹介していきます。

1.Edward Choiほか(2018)Compositional obverter communication learning from raw input

2.Angeliki Lazaridouほか(2018)Emergence of linguistic communication from referential games with symbolic and pixel imput

3.Jakob Foersterほか(2016)Learning to communicate with deep multi-agent reinforcement learning

4.Angeliki Lazaridouほか(2017)Multi-agent cooperation and the emergence of (natural) language

5.Sainbayer Sukhbaatarほか(2016)Learning multiagent communication via backpropagation

6.Emilio Jorgeほか(2016)Learning to play guess who ? and inventing a grounded language as a consequence

7.Igor Mordatchほか(2017)Emergence of grounded compositional language in multi-agent populations

8.Satwik Kotturほか(2017)Natural language does not emerge ‘naturalluy’ in multi-agent dialog

9.Serhii Havrylovほか Emergence of language with multi-agent games: learning to communicate with sequence of symbols

10.持橋 大地ほか(2009)「ベイズ階層言語モデルによる教師なし形態素解析」

11.長井 隆行ほか(2012)「マルチモーダルカテゴリゼーション –経験を通して概念を形成し言葉の意味を理解するロボットの実現に向けて-」

12.[スライド] 中村 友昭「言語を獲得するロボットの実現に向けて」

13.Tomoaki Nakamuraほか (2009) Grounding of word meanings in multimodal concepts using LDA

14.谷口 忠太(2016)「記号創発システム論に基づく長期的な人間-ロボット協調系の実現に向けて」

15.谷口 忠太(2016)「記号創発問題」

16.國吉 康夫ほか(2010)「人間的身体性に基づく知能の発生原理解明への構成論的アプローチ」

17.[特別講演録] 國吉 康夫ほか(2009)「身体が脳をつくる-ロボットを題材とした構成論的科学のアプローチ」

18.森 裕紀(2010)「触覚を通して反射的行動を自己組織化する子宮内胎児の神経発達モデル」

19.Moriほか(2007)A cognitive developmental scenario of transitional motor primitives acquisition

 これらの論文はすべて、誰でもウェブページ上で無料で閲覧・ダウンロードすることができ、誰もがアクセスすることができます。

 しかし、こうした研究でこれらの論文が公開されているという事実を知っている人はまだまだ少ないと考えられます。

 人工知能を専門とする大学や企業の研究者やプログラマでも、「言語創発」を専門にしていない限り、これらの論文を知っている人はかなり稀なのではないでしょうか。

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AI研究家 小野寺信

AI研究家 小野寺信

1944年、長野県生まれ。カナダ在住。1930年代の「物」論考、「哲学への寄与」論考など、いわゆるハイデッゲルの中期思想と、西田幾多郎ら京都帝大の「場所の論理学」の思想の架橋を志すも、九鬼周造の「偶然性の哲学」の文章に触れて、己の非才を悟り、断念。計算機科学と知能の計算論的再現に惹かれ、人工知能の研究に励む日々を送る。若いAI産業人や大学・大学院生に対して、カオス理論と身体性に立脚した「米国の後追い」ではない、我が国自身の「AI研究アプローチ」が実在することを知らせる必要性を痛感し、連載をスタートした。