■チャオプラヤーに揺られて

 蒸し暑いバンコクも、ようやく夕方になり、風が出て少し涼しくなる。チャオプラヤー川沿いの黄金色に輝く寺を眺めつつ船に乗る。川の中程を船頭が小さな小舟を上手に操り進んでいく。うーん、これぞ東南アジア!とか思いながらゆらゆら揺れていると。。。。

アイコンサイアム

アイコンサイアム。奥がアップルストアになっている

 全面ガラス張りでピッカピカの巨大商業施設がドーンと現れる。入り口には、カルティエ!ルイヴィトン!これは11月10日にオープンしたばかりの新たな商業施設「Icon Siam」(アイコンサイアム)だ。エントランスにはハイブランドがこれ見よがしに並び、まるで高級ホテルのロビーのよう。

 この「Icon Siam」は、タイ最大のコングロマリットCPグループ肝いりの商業施設。1.67Billion USドル、日本円で2000億円ほどの費用をかけた豪華建築だ。中には高島屋も併設され、アジア最大のアップルストアも同時にオープンしている。

 3日間行われた開場イベントには、30億円以上の費用がかかかったとかなんとか。。。。いやはや、やることが派手である。

■ダイナミックな商業施設

 今のバンコクでは、こういった巨大商業施設は珍しくない。中心部の駅サイアムには、アジア最大級のモール「サイアムパラゴン」が、スクンビット通りには「エンポリアム」と「エムクオーティエ」、さらに近年はラマ9駅も急ピッチで再開発が進み、地下鉄やスカイトレインの一駅ごとに巨大モールやコンドミニアムが立ち並び、その密集度は世界でも例を見ないものになっている。

 はっきり言って、こんなにあって一体誰が買い物をするのだろう??と思ってしまうくらいなのである。正直、「Ginza6」だの「六本木ヒルズ」だの、東京の商業施設ではまるでかなわないんじゃないかと思ってしまう、ダイナミック感と躍動感がこの町にはあったりするのである。

 つまり、皮肉なことに日本のような資本主義の栄華を先に受け取り、高度経済を果たした「先進国」から来ると、バンコクの物に溢れる様子、その「資本主義的な」華やかな街並みに面食らうことになるのだ。東京にもロンドンにもニューヨークにもない、怖いもの知らずの派手さがあるのである。

建物の中はタイの水上マーケットの様子が再現されたフロアもある

売り子

■資本主義の限界

 現在、日本や欧州・米国をはじめとする先進諸国は資本主義の限界を身をもって体験している。縮まらない格差、消費主義への反感。アメリカのミレ二アム世代の3割はマルクス主義に賛同するという。
 
 24時間営業は少なくなり、デパートや商業施設は小さくなって閉鎖していく。車もいらないし、必要のないものは買わない。ミニマリスト、持たない暮らし、「ヒュッゲ」などのキーワードもてはやされる。消費はむしろダサい。

 逆に「資本主義」を謳歌しているように見えるのはこのタイをはじめとした中進国・新興国と言われる国々だったりするのである。現代の日本人が高度経済成長期にある種の憧れを抱くように、これからの世界のポスト資本主義の世代はどちらを豊かさ、と判断するだろうか。

 しかし、これだけ都会化が進んでいるんだから、タイの景気もよっぽどいいのだろう、かと思えばそういうこともなく、GDPの伸びは鈍化し、高齢化も徐々に進んでいる。そして国際通貨基金の評するタイは、「豊かになる前に高齢化する」国である。

 タイ政府は、タイランド4.0という計画をもって、2036年までに高所得国入りをする、ということを目標にしているが、そのころには高齢化がかなり深刻になっていると予想され、これらの問題をクリアしない限り、タイの今後の繁栄はまだ未知数と考えたほうがよさそうだ。

近年開発が進むトンブリー地区の夜景

■ポスト資本主義の未来はどっちだ?

 それでも、バンコクの大型箱物建築計画は止まる所を知らない。ただ、私たちはすでに正直デパートのような箱物の未来は、あまり芳しくないことを知っている。数十年後これだけの箱物はどうなってしまうのだろう、とむしろ心配にもなるのである。

 しかし、現在のバンコクは傍目にはとても華やかだ。街には物が溢れ、クレジットカードで買い物をし、車のローンを組む。タイのGDPに比する債務の比率は81%にまで積み上がった。借金を繰り返し、それぞれのバランスシートを拡大させ、消費を楽しむ。That’s 資本主義だ。

 それに対し、欧米、日本も含む先進は資本主義の限界に気づきながら、それに変わる回答をまだ明確に見出してはいない。ポスト資本主義はどこにあるのか、方向性の定まらないボートのように、ふらふらと揺られているベーシックインカムに代表されるように。漠然と様々な実験を繰り返している。そして、まだ「成長」を追い求め続けざるを得ない宿命に苦しんでいるのだ。どこかに無理があると知りながら。

ライトアップされた大晦日の仏寺の様子

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バイラルワークス 早川大地
1977年東京生まれ。アプリ・音楽・メディア制作を行う株式会社バイラルワークス代表。自身もエンジニア、音楽プロデューサーとしての顔を持つ。現在は東南・東アジア、欧州、中米など1~2カ月ごとに国を移り、十数カ国を渡り歩く「移住生活」を行っている。