外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案、いわゆる「移民法案」に保守層を中心とした懸念が広がる中、衆議院法務委員会は11月22日、参考人質疑を行った。言論ドットコム編集部が注目したのは、外国人の在留管理と多文化共生政策はどこが中心となり、どのように進めていくのかという点である。その点を質問したのは、立憲民主党の山尾志桜里衆議院議員だ。今回も質疑の模様を書き起こしたのでご覧いただきたい。

参考人は、
①安冨潔氏(京都産業大学法務研究科客員教授 慶應義塾大学名誉教授 弁護士)
②レロンソン氏(ESUHAI Co.Ltd代表取締役)
③鳥井一平氏(特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)
④坂本恵氏(福島大学行政政策学類教授)
⑤指宿昭一氏(日本労働弁護団常任幹事 弁護士)
⑥八代尚宏氏(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授)

山尾志桜里衆議院議員
「立憲民主党の山尾志桜里です。本日はありがとうございました。まずはですね、指宿参考人にお伺いしたいと思います。在留管理政策と共生政策は別物であり、両輪であると。そして、この両輪についてですね、法務省単独の一元管理は難しいというか、ふさわしくないのではないか、やはり多文化共生庁が必要ではないかというお話を伺いました。私も方向性としてはそう思います。私の感覚ではですね、それこそ日本にきてくださっている外国人の方が暮らしのトラブルや問題を抱えたときに、出国、入国の手綱を握る役所に暮らしの相談ができるだろうかという素朴な疑問もございますし、ちょっとそういった法務省の一元管理の下で共生政策までやるのは難しいよ、というところの少し具体的な観点をお話しいただければと思います」

指宿参考人
「ありがとうございます。実際、外国人労働者の相談を受けていて労働問題について法務省に相談に、入国管理局に相談に行く人はもちろんいないですね。技能実習生の場合もほとんどいないと思います。逆にわれわれ弁護士がこの件は、つまり解雇されてその職場にいられなくなった。これから争うんだけど、一応解雇されていることになっているので、それで3カ月過ぎると在留資格の取り消し理由になると。その時に、逆にわれわれの方が本人を説得して、これは入管に報告しておかないと後でまずいことになるから報告しましょうといって、それで先生の方からやるならいいですよといってやるという感じで、やはり外国人、実習生に限らず管理する役所ですから、どうしても警戒する、そういう面が強いと思います。労働問題は厚生労働省と知っている外国人はみんな知っていますし、ただ、さっきいったように労基署にすらいけない実習生の場合はいけないということがありますが、そういう意味でも入管というのはやはり管理する側であって、法務省は在留管理の役所であって、多文化共生の担い手、あるいは外国人支援の担い手という風には少なくとも実際の外国人労働者には認識されてはいないと思います」

山尾氏
「ありがとうございました。ちょっと同じテーマですね、安冨参考人にも伺いしたいんですけども、安冨参考人、この出入国在留管理庁について研究をされておりました。ちょっとその趣旨を伺いたいのは、私はさっきの話を聞いてですね、決して安冨参考人が出入国管理のみならず、そのいわゆる共生政策、多文化共生政策ですね、暮らしの現場のところで共に生きていくための行政としてのサポート、ここも含めて法務省が単独で統合して一元的に管理していくということに賛成という立場には私はお聞きしてお見受けしなかったんですが、ちょっとその点を整理してお話をいただけますか」

安冨参考人
「お答え申し上げます。いま先生が御指摘の通り、新しい在留管理庁の組織とか、どういう目的で、どのようなことを行うのかということについては非常に幅が広いと思います。御指摘がありましたような共生社会について、じゃあ新しくできる庁がですね、十分に対応できるのかという御懸念はありえると思います。私も伺っている限りはどこまで具体的に、どのような所掌事務をどのようにやっていくのかということについては、まだこれからだと認識しているところでございます。今度できる制度自体はですね、主たる所掌は在留管理政策、その中に在留支援、その支援の中には共生社会という観点も入れたらですね、これを単に新しい庁がやるわけではなく、新しい法律の中では必要があれば国家公安委員会、警察庁、厚生労働大臣、厚生労働省その他のところと協議するものとすると、事前にですね、という形で決して単独でやろうという考え方ではない。いわば、省庁をあげて総合的な仕組みづくりをした上で、その所掌を新しくできる庁がやるというような形かなと理解しているところです。そういう意味では共生社会というものを実現していく上でのいわば窓口といいましょうか、実質はいろいろなところが協力して、外国人の方々に住みよい良い環境の中で働いていただくことを願って、そういう意味での仕組みづくりだという風に私は理解しているところでございます」

山尾氏
「ここをちょっと深掘りするのは、ちょっと時間的に難しいかもしれませんけども、せっかく専門家というかいらっしゃるので、違和感を感じるのは私は共生社会、多文化共生社会という大きな国の枠組みづくりがまずあって、その中の大事な一部は出入国管理行政という点が私としてはね、あるいはせめて両輪ではないかと思うんですけど、先生がいま仰った政府の枠組みで言うとですね、出入国管理の中に在留支援があり、その中に共生社会という、そういうちょっとなんていうんでしょう、逆といいますか、少し位置づけが私の中では政府の見方というのは不自然かなと思う点があるんですが、先生ご自身は2つの問題ですね、出入国管理と共生政策、どういう位置づけで考えるのが適切だと思いますか」

安冨参考人
「お答えをさせていただきます。若干、私の説明に不十分であったかもしれませんが、先生が御指摘の通り共生の問題と在留管理の問題は2つの大きな両輪であります。それをどういうような形で進めていくかといったときには十分な共生社会を実現する上で、我が国においては在留されている方がこの共生社会で生きていく自治体を含めてつくっていくというところの窓口という位置づけで新しい庁ができるんだと。ですので、決して法務省ではないわけです。別の形で組織をつくって、そこが共生もやり、芯をつくるという形での位置づけであるという風に私は認識しているところでございます」

山尾氏
「それでは次にですね、坂本参考人に伺いたいと思います。参考人の持ち方ですね、実は一昨日提案をされ、本当に野党からの皆さんの御願いは本当に明日お願いしますということになってしまって大変申し訳なく思っております。私がさらに申し訳なく思っているのは、法務委員会をやりながら他の委員会でもできるだけ参考人の中には女性がいた方が良いと思っておりましたが、そこまでのケアができませんでした。実際、女性の方にもお願いしましたけども、行きたいけど仕事があると、明日は無理ですということでした。坂本参考人にお伺いしたいのは、坂本参考人、例えばベトナム人の女性研修や実習生の現状から考える、というような論文も書いておられまして、やはり女性が日本を目指し、目指した日本で希望をつかむ人もいるけども、やはり女性ならではの苦労も含めて大変な失望を感じる人もいると。そういう現状もご存じだと思うんですね。この論文の中にはベトナム人の女性についてですね、外国人労働者の1つの日本の構造として、やはり就労機会とか高度技術へのアクセス機会が限られている人が出稼ぎとして日本に来ると、構造上ある中でこの問題は女性の多くに当てはまると、こういうことも書いておられましたので、少しそういう観点からも問題点をお伺いできればと思います」

坂本参考人
「私の論文まで読んで頂きましてありがとうございます。レロンソン参考人からもありましたけども、ご案内かと思うんですけども、ベトナムは海外の労働者派遣に関して言うと、後進国なわけですね。ロシア、フィリピンは西側というか、アジア諸国も含めて派遣の経験というのも長かったんですけど、ベトナムは戦争もありましたし、派遣が遅れたわけなんです。だから派遣する際に条件が悪くても派遣するということがある意味一貫して、ベトナムがとってきたことでもあるわけなんですね。先程の女性の実習生の話ですけども、私も本当に30人くらいですね、ベトナムの実習生にかかわってきて、私は日本ベトナム友好協会の副理事長も経験しておりますけども、レロンソン参考人の受け入れ派遣機関は大変素晴らしいと思います。ただ、ご案内の通りベトナムの派遣機関は70くらいだったのが、あっという間に200を超えて、いろいろな方が関わられている、必ずしもルールを守られないということもあるわけなんです。女性に関して言うと、本当にその1、2歳の子供を残してですね、3年間帰らないと。子供も親の顔を忘れるということもあるわけなんですけども、技能実習生の女性たちは本当に最賃の半分くらいでもずっと子供の進学のため家族を支えるため、その意識が非常に強い。ちょっと別の話になって申し訳ないですが、やはり女性の海外実習生にしても労働者にしても、それを集中的に支えるシステムの構築、これは他の国はやられているんです。日本でも女性の労働者を受け入れるようなシステムの構築が本当に求められていると思います」

山尾氏
「ありがとうございました。それではですね、鳥井参考人にお伺いしたいと思います。私は以前、鳥井参考人のいろいろな話をお伺いしていて、1つ、そうだよなと思ったのは確かに違法、悪質な事例というのはたくさんあります。時給が低いとか長時間労働とか。そういったかなりひどい事例ですら、受け入れている事業主の社長さんは必ずしも悪い人間ではないと。そして、また送り出し機関だって必ずしも悪質で、がっぽり儲けているようなそういう機関だけではないと。こういう状況をつくっているのは、やはり制度なんだという話がありましたので、ちょっとその中身についてですね、お話をいただければと思います」

鳥井参考人
「ありがとうございます。私はこの長い間、たくさんの社長さんたちと会ってきたんですね。農家の方々とも会ってきました。ほとんど普通の方です。いわゆるヤクザ、暴力団といったのはほとんどいないんですよ。どうしようもないかなという方はかえってちょっと地元のいわゆる議員経験者だとかはいらっしゃるんですけども、ほとんど善良な方と言ってもいいのではないでしょうか。地域の自治会長とか面倒見の良い方とか、農家のおやじさんたちです。そういう人たちがなんでこういうことをするんだと。時給300円なんて誰が考えてもおかしいわけですね。これ、社長おかしいでしょというと、おかしいんだと。なんで、日本人にこういうことをしますかと、いやしないんだと。あるいは、私もおかしいと思うんだけど、自分のところだけ給料を上げると管理団体にしかられるんだと。それで、先程、技能実習制度は長い間、送り出し国に貢献をしていると、これも事実なんですよ。それは、なぜかというと、技能実習制度固有の役割を果たしているのではなく、出稼ぎ労働の役割としてですね、出稼ぎ労働をすると地域の産業やそういうものに役立っているんです。韓国の企業の、ベトナムの韓国企業、不動産会社の通訳として働くとかですね、そういうものに役立っていると。日本の場合でも日本企業で働くということで役に立つと。これなら出稼ぎ労働として役に立っているわけですよ。しかしながら、技能実習制度としては役に立っていないんです。百害あって一利なしと申し上げたのは、日本の社会において社長さんたちが勘違いしてしまうんですよ。この勘違いというのは怖い。開発途上国への技術移転なんていうことがあるもんですから、そのことで、よく使われる言葉でこの子、この子、というんですよ。このことが技能実習生とか留学生ということで、その入り口しかないもんですから、そういう誤った感覚をつくってしまう。社長さんたちが大小強弱ありますけども、みんなセクハラを経験している。社長さんたちは、はじめは良い社長さんたちなんですけども、ちょっと口ごたえをすると入管呼ぶぞとか、ドキッとしている。先程も申し上げましたように3年間働いてされるんですよ。費用はかかっているんです。この費用を取り戻すためには、3年間働かないとダメなんです。そうすると、びくっとしちゃう。それを見ていてですね、人の良い、善良な社長さんたちが変わってしまうんですね。これが怖いんです。この制度が。善良な社長さん、普通の人を普通たらしめない、この制度の怖さというのは、労働者を労働者として受け入れる、労使関係の緊張感の中で社長さんたちが迎えていくということがあればですね、そういうことが1つでも、2つでもなくなっていくと。この制度の適正化というのはちゃんとした賃金を払う、ちゃんとした寮にすませるとかでは適正化になっていないんですね。これは、どう見てもやられていない。今度、特定技能を中間的な位置づけにすると仰るのであれば、一番最初入り口の段階での在留資格をつくっても良いのかもしれません。それは、技能実習制度ではないんです。技能実習制度はとっとと廃止してですね、活躍できる新しい制度をぜひともつくっていただいた方がいいのかなと思います」

山尾氏
「ありがとうございました。八代参考人、ちょっとお聞きできなくて申し訳ございませんでした。レロンソン参考人もこうして来ていただいて大変敬意を払っております。本当に貴重な御意見をいただきました。1回目の参考人質疑でございます。来週から皆さんの貴重な意見をしっかりと受け止めて本格的な議論をスタートさせたいと思います。ありがとうございました」

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