外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案、いわゆる「移民法案」が11月27日、衆議院を通過した。自民、公明両党は日本維新の会と改正案の修正で合意しており、会期内成立を図って来年4月の新制度導入を目指す。言論ドットコム編集部は、11月27日の衆議院本会議における賛成討論と反対討論の模様を書き起こしたので是非ご覧いただきたい。今回は立憲民主党の山尾志桜里衆議院議員による反対討論である。

山尾志桜里衆議院議員
「立憲民主党の山尾志桜里です。外国人労働者受け入れ拡大を内容とする入管法改正案に対し、立憲民主党・市民クラブを代表して反対の討論を致します。国家の覚悟が問われる法案が国会に提出されてみたら、何も決まっていなかった。中身が決まっていない法案が通った時に一体何が起きるのかをお話したいと思います。

決まっていない1点目、受け入れ見込み数です。外国人労働者の受け入れ拡大法案ですから、何人拡大するかは議論の大前提です。閣議決定の時に数字は示されていませんでした。閣議決定の後に5年間で34万5000人という急ごしらえの数字が提示されました。その上、審議をはじめたらこの数字は法案が成立した後に分野別に計算しなおす予定ということが明らかになりました。法務大臣の答弁を借りれば、自らが国会に提出した数字は素材に過ぎないそうです。法案審議に素材を提出しないでいただきたい。立法府には、正式な数字を出していただきたい。34万5000人を前提に議論してもその後、40万になるかもしれない、50万になるかもしれない。100万になるかもしれない。素材の数字では責任ある質疑と採決はできません。

2点目、上限規制です。いま指摘したように受け入れ見込み数は決まっておりません。さらにこの見込み数は上限ではありません。法案を通した後に決める正式な数字を上限として運用したいとのことです。その運用スキームはその1、受け入れ数が見込み数に近かづいた場合、法務大臣が関係省庁に注意喚起をする、その2、関係省庁の大臣が受け入れ停止を求めたら受け入れを停止する。説明は以上です。そもそも、人材不足に悩んでいる業界の所管省庁は受け入れ停止を求めないのではないんですか。そして、所管官庁が求めなければ停止しないのならば上限として機能しないのではないんですか。つまり、総理も法務大臣も受け入れ数を上限として運用すると答弁しているのはごまかしで、正確には上限として運用されたらいいなという願望ではありませんか。法案審議で願望をあたかも制度のように語らないでいただきたいと思います。

3点目、永住資格です。新しい制度で受け入れる外国人の方々が永住者としてなっていくのか否か、今なお安倍内閣は判断を先送りにしています。総理いわく法務大臣が決めるべき運用の問題だそうです。労働者として受け入れ業種と、人数を大幅に拡大する制度の提案ですよ。そうした人々を潜在的永住者として位置付けるかどうかは、国家の主権にかかわる重要な問題であり、国家のリーダーがなすべき厳しい政治判断そのものではありませんか。安倍総理自身が批判も甘受する覚悟で政治判断をし、閣議決定をして立法府に問うべきです。法務大臣が後で決めますと言い訳をして厳しい政治判断から身を隠すのは総理大臣として無責任です。

4点目、拡大する労働の範囲です。単純労働には拡大しないといいながら、単純労働なるものの具体例は1つも出てきません。言い換えれば、これだけは外国人労働者に拡大しませんという労働は、この質疑の間を通じて1つも存在しております。土を右から左に動かすだけの仕事、あるいはティッシュ配り、最初の法務省の例示も法務大臣が撤回を致しました。つまり、この法案の正体は省令さえつくれば、およそあらゆる労働について外国人受け入れを可能にする法律になってしまっているのではありませんか。結局、外国人労働者の受け入れ拡大法案はおよそあらゆる労働について、人数の上限なしに、潜在的永住者として外国人の受け入れ拡大を可能とする法律として成立します。成立後、どんな枠付けをするかは時の法務大臣の采配1つです。賛成する与党の皆さんはずいぶん法務大臣を信頼されているようですが私たちは違います。立法府の一員として、外国人の受入れ制度、日本政府以外の国際社会がおよそ移民政策と呼ぶものの根幹を法務大臣に丸投げすることはできません。あわせて、政府が提案している新制度は、技能実習制度なしには成り立たない制度です。政府・与党は失踪者問題と今法案を切り離そうと必死ですが、法務大臣自ら来年4月の施行を急ぐ理由に遅れると何万人という技能実習生が帰国してしまう旨、今日も答弁をしています。与党の議員も宿泊業を技能実習に追加して特定技能の供給源とする駆け込み提案をしています。技能実習制度なくして新制度なしという制度設計をしたのは、政府・与党ではありませんか。この土台となる技能実習制度に外国人の人権問題、労働問題という深刻な問題があり、虚偽データの発覚によって、ようやくその問題に光が当たり始めました。政府がなすべきはデータのコピーを認めて、与野党、政府が一体となって問題点の解決にあたる環境整備です。手書きを認めてコピーを拒絶し、事実上の拡散を最小限におさえて、問題を再び闇に閉じ込めることはやめていただきたいと思います。

私たち立憲民主党は提案を致します。まず技能実習制度はすでに就労している技能実習生や適正な受け入れ機関に不利益がないよう配慮しつつ、段階的に廃止して、就労を正面から受け止め、受け入れる新しい制度に移管統合していく道筋をつくるべきです。また、丁寧に受け入れ数をコントロールしてはじめて来る側、受け入れる側の双方の準備が整い、多文化共生社会になって一歩一歩前進することができます。だからこそ、受け入れ総数には上限枠、総量規制を制度としてしっかり設けるべきです。虚偽データの訂正すらおぼつかない法務省、入国管理局に319人も増やして庁に格上げしても在留を含めた適切な管理ができるようになるとは思えません。そもそも出入国の手綱を握る役所に在留中の暮らしの相談を安心してできるわけがありません。人員をつけて、予算をつけて、新しい役所をつくるなら、入国在留管理庁ではなくて省庁横断機能をもつ多文化共生庁をつくるべきだと考えます。また、今回、外国人の方々が働き方を通じて浮かび上がった問題点、残業代の未払いや最低賃金割れ、長時間労働のハラスメント、これらは外国人であるか日本人であるかを問わず現在の労働市場が抱える深刻な問題です。その上で外国人の方々はうまく言語が通じない、抱えた借金を返すまで正当な権利を主張できない、救済機関へのアクセスが難しいなど、困難を抱えています。単純労働は外国人には拡大しないとか、移民政策はとらないとか、その場しのぎの曖昧な概念で線引きし、適切な待遇を受けていない日本人労働者と外国人労働者との間に分断と排除の種を埋めこまないでいただきたい。

今回の法案の対象になっている外国人労働者もいま厳しい労働環境にあえいでいる日本人労働者も、生活者であり人間です。そして働くという営みは生計をたてる重要な手段というだけではなく、仕事を通じて夢をかなえたり、新しい未来をつかんだりするための自己実現に直結します。だから、働く営みの中で労働者の尊厳を傷つけるような働かせ方を許す制度の見直しは先送りにしてはならないと思います。しかし、今国会における法案の審議は、働く生活者たる外国人を受け入れていく日本社会の大きな転換とその重さに値する審議ではありませんでした。詰め込み質疑を強行し、行政府と立法府のコミュニケーションはとれず、大臣は通告がありませんでしたと言い訳を連発しながら出すべきデータは出さずじまいです。偽りのデータを土台にして空っぽの法案を提出した政府に対し、アリバイ作りの時間を積み重ねることが立法府の役割ではないはずです。多文化共生は簡単な話ではありません。

大豆やトウモロコシの輸入とは違い、国内供給が増えたら輸入ストップというわけにはいきません。人間を国家に受け入れる話をしています。目先の経済や支持母体の顔色ばかりみて、きちんと制度設計をせずにドアを開けたら簡単に閉じることはできず、取り返しのつかない分断を見ます。だからきちんと制度設計をするための議論を続け成熟させるのは、国会の責務なのです。法務委員長、議院運営委員会委員長、あるいは衆議院の議長、国会運営の長の多くは公平・中立という名の下に与党の議員が担います。しかし、いかに公平・中立の仮面をかぶっても、最後はリスクをとらず、政権に唯々諾々と従うようなこんな運営を続けていたら立法府は壊れます。もう壊れていると思います。権限ある人間がいざという時にその権限を勇気と正義感をもって使わないのであれば、その人間は傍観者ではなく、共犯者だと思います。

法務委員会での強行採決、さらには緊急上程、さらには熟議がないままブザーが押され、本会議での採決がなされることにこの場から強く抗議を致します。外国人受け入れという国家の覚悟を問う法案に対し、立法府としての熟議がまったく果たせていないまま行政府の下請けになって賛成することは誤りです。私たちは立法府の責任を果たす立場から、国家の品格に賭けて、外国人の尊厳を守る立場から、信念にもとづき本法案に対して反対を致します」

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