外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案、いわゆる「移民法案」が11月27日、衆議院を通過した。自民、公明両党は日本維新の会と改正案の修正で合意しており、会期内成立を図って来年4月の新制度導入を目指す。言論ドットコム編集部は、11月27日の衆議院本会議における賛成討論と反対討論の模様を書き起こしたので是非ご覧いただきたい。今回は国民民主党の階猛衆議院議員による反対討論である。

階猛氏
「国民民主党の階猛です。私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の入管法改正案につき反対討論を行います。以下、理由を述べます。まず、今法案では特定技能なる在留資格を得るために必要な技能、知識の水準、新たな在留資格が認められる業種と受け入れ人数、新たな在留資格による外国人労働者の処遇の水準などが法文上明らかではありません。特定技能とは名ばかりで、その実態は不特定技能です。政府は今法案成立後に法務省令で規定するとしますが、制度の本質部分を法律で定めず、行政府に包括的に白地で委任することは国会を唯一の立法機関とする憲法41条の規定に反します。と同時に恣意的な行政圏の行使によって業界団体等と政府・与党との癒着の構造が生じやすく、行政執行の公正さを損ないます。

国民民主党は、外国人の受け入れ上限数を決定する客観的かつ合理的な基準を法律で定めるべきだと考えます。これにより、癒着の構造を防ぎ、日本人の処遇水準の低下など社会への悪影響も防ぐことができます。さらに、この上限数を政府のように分野ごとだけではなく、産業別、地域別に人手不足がより深刻な地方において確実に外国人材を迎えることにつながります。この法案が準備不足であることは法務委員会の与党筆頭理事ですら公の場で認めています。こうした内容不十分な法案を政府が国会に提出することは国会を冒涜しているといわざるを得ません。

次に今法案の施行により増加する外国人労働者の見込み数とその根拠、特定技能1号資格を得る外国人労働者の主たる供給源となる技能実習制度の運用状況などは本法案を審議する上で不可欠な情報です。本来であれば、これらにつき正確な資料を政府は審議前に開示すべきでした。しかしながら前者については本会議で代表質問が行われた翌日に数値だけが示され、算定根拠が示されたのは、その2日後の夜でした。加えて、経産省所管の3業種については特定技能1号の供給源はほぼ100%、技能実習生となっており、その根拠を突き詰めると経済産業大臣は仮置きだと驚きの答弁を連発いたしました。また、後者にいたっては昨年失踪した技能実習生約2800名の聴取票をわれわれが求めたのに対し、プライバシー侵害や刑事訴追の恐れなどを口実にこれを拒んでおり、聴取結果をとりまとめた資料だとして、あたかも現行制度に問題がないかのような内容を記載したものを提示し続けたのです。

ところが、度重なる交渉の結果、聴取票の一部議員への閲覧が認められた途端、法務省はとりまとめ資料には集計結果とそれに基づく評価の面で著しい誤りがあることを認め、謝罪するにいたったのです。さらにその後訂正された資料についても不適切な表現が散見され、法務大臣は再修正を検討している最中です。前国会では財務省の文書改ざん、厚労省の不適切なデータ、防衛省の杜撰な文書管理が問題となり、議長の書簡でも再発防止を求めたにもかかわらず、なんら改善が見られません。先に述べた通り、経産省所管の3業種を含め、政府が特定技能1号を検討中の14業種の中でその供給源を技能実習生に頼っているものは、数多くあります。技能実習制度は事実上、新制度の土台です。実態把握を誤り、問題点を改善しないままに新制度を構築するならば、壊れた土台の上に家に建てるようなもの、すぐに崩れてしまうでしょう。

国民民主党は、新制度を導入する前にこの技能実習制度をはじめ、留学生のアルバイトや日系人など現行の外国人労働者の各種受け入れ制度の実態把握をきちんとした上で、制度の抜本的見直しをするべきだと考えます。国会と国民の判断を誤らせるような杜撰な資料、誤った資料を放置したまま採決することなど認められません。拙速な採決の前にまずは政府に正確な情報を迅速に開示してもらうのが国会の当然の責務です。

以上の通り、今法案はその内容面や審議に不可欠な資料の点で大きな問題を抱えており、本来であれば法務委員会で法案を審議できる状況ではありません。しかしながら、現下の全国的に深刻な人手不足、今法案に対する国民の関心の高さに鑑み、われわれはできるだけ積極的に審議に応じ、建設的な議論を行うよう努めてきました。

にもかかわらず、法務委員長と与党理事は前日の資料の誤りで審議が長時間中断した16日には、別の内閣提出法案の採決を終えた後、一般質疑、本法案の趣旨説明、質疑のいわゆる5階建ての委員会運営を深夜までかけて強行しようとしたのです。さらに21日の7時間の質疑の後の午後6時すぎに法務委員会の定例日ではない翌22日に本法案の参考人質疑に加え、質疑を行うことを委員長職権で決定。22日の審議終了後の午後7時ごろにはやはり定例日ではない、26日にも質疑を行うことを委員長職権で決定。挙句の果て、本日、重要広範議案であるにもかかわらず、たった17時間の審議で強行採決されたのです。

法務委員会はいつから無法委員会になったのでしょうか。しかも、この間、われわれの度重なる要請にもかかわらず、前日の失踪した技能実習生約2800名もの聴取票の写し配布に政府・与党が応じないため委員会が開催されていない時間は、閲覧を許されたわれわれの会派に所属する法務委員などが聴取票の分析に謀殺されました。法務省ほか、今法案に関係する各省の職員の側も必要な資料の不備を受けない急遽設定される政府答弁を準備するため、連日深夜にわたる長時間労働を強いられたのです。こうした各方面に無理をし、悪影響を及ぼすような異常に過密な委員会運営を行う理由について、22日の理事会で自民党理事の1人は会期末は12月10日と決まっているからだと信じられない発言を行いました。議会制民主主義の本質をふみにじるものであり、断じて容認できません。

本年7月31日、衆議院議長から国会議員と行政府に向けた異例の書簡が発表されました。憲法前文と41条の文言を引用しつつ、前国会では法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせる恐れがあるものや、行政執行の公正さを問われた諸所の事案など、民主的な行政監視、国民の負託を受けた行政執行という点から民主主義の根幹を揺るがす問題が生じたとしています。その上で、行政府と立法府に対し、深刻な自省と改善を求めております。しかしながら、政府と与党は自省と改善に取り組むどころか、今国会のいわゆる入管法改正案の審議においては法案自体の内容、法案審査に不可欠な資料、法案審査の手続き、それぞれの面でさらなる民主主義の根幹を揺るがす問題を生じさせているのです。立法府の長である衆議院議長による異例の書簡がこのまま政府と与党によって無視されることがあってはなりません。国会の権威を取り戻し、国民の国政への信頼を取り戻すためにも議員各位に対し、今法案への反対を強く要請しまして、私の討論を終わります。ありがとうございました」

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