外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案、いわゆる「移民法案」が11月27日、衆議院を通過した。自民、公明両党は日本維新の会と改正案の修正で合意しており、会期内成立を目指す。衆議院と参議院は与党が圧倒的多数を占めており、来年4月の新制度導入は確実な情勢だ。人手不足を理由に外国人労働者の受け入れを拡大するという大転換を前に、「公器」といわれるマスメディアはいかに伝えているのだろうか。言論ドットコム編集部は今回、主要紙の報道ぶりを分析した。

■社説で取り上げたのは3紙

 朝日、毎日、読売、日経、産経の主要5紙の最終版(11月28日付)を見ると、与党側の採決強行という事態も手伝い、さすがに1面で大きく取り上げている。日経を除く各社は1面トップで報じ、朝日と毎日は衆議院法務委員会での審議が「17時間」のみだったことを見出しにしている。

 各紙の最終版1面見出しは、
朝日-入管法案衆院通過 委員会採決強行 審議17時間のみ

毎日-入管法案衆院通過 委員会審議17時間 与党、採決を強行 議長、政省令報告促す
読売-入管法改正案衆院通過 外国人材 来月上旬にも成立 参院きょう審議入り
日経-入管法改正案が衆院通過 政府・与党 会期内成立めざす
産経-入管法改正案衆院通過 外国人材拡大 きょう参院審議入り

 朝日は1面サイド記事の他、2面、4面、社説、39面に展開。毎日は1面の解説記事の他、2面と3面で見開き、社説、社会面に関連記事を掲載している。読売は2面と4面、日経は2面、産経は社説と3面で取り上げた。

 社説で取り上げたのは朝日、毎日、産経の3紙。その見出しは、
朝日-入管法案採決 暴挙に強く抗議する
毎日-就労外国人 法案が衆院通過 緒に就いたばかりなのに
産経-「入管法」衆院通過 論点置き去りは許されぬ

 ここから言論機関として、どのように論じているのか具体的に見ていきたい。

■安倍応援団も「納得することは難しい」

 朝日は「安倍政権のもとで国会審議の荒廃は進む一方だ」と切り出し、審議時間がわずか17時間で地方公聴会も開かれずに採決が強行されたと指摘。安倍晋三首相の姿勢については「政府に白紙委任せよ、国会など無用だと言わんばかりの姿勢だ」とした上で、「話し合いをしようという『ふり』さえ、早い段階でかなぐり捨ててしまった。暴挙に強く抗議する」と痛烈に批判した。

 毎日は「急ごしらえで完成度の低い法案であることは誰の目にも明らか」とし、「異論ばかりか建設的な提言すら一切受け付けようとしない政府・与党の専横ぶりはすさまじい」と批判。政府・与党が新たな在留資格を認める新制度の導入を来年春としていることに関しては「来春に技能実習を終える外国人が『万単位』で新資格に移行すると見込み、法施行を来年4月に間に合わせなければならないと主張するのは明らかに矛盾している」と指摘した。その上で「審議を通じて修正するか、政府に具体的な運用方針を答弁させ、行政に縛りをかけるのが国会の役割であるはずだ」として、参議院での実りある審議を求めている。

 産経は「労働力不足のためというが、制度があやふやなまま踏み切れば社会に混乱が生じ、日本人と外国人双方の人権が損なわれる事態になりかねない」と政府・与党の姿勢を厳しく断じた。その上で「安倍晋三首相は移民政策ではないというが、納得することは難しい。国の形を大きく変え得る政策の転換だが、多くの国民に伝わっているとは言い難い」と批判し、禍根を残す可能性に触れている。
 
 保守系の読売・産経と、リベラル系の朝日・毎日といわれることが多いが、主要紙の論調は、委員会審議が短時間のみで地方公聴会などが開催されなかった議会運営を批判している点で共通している。また、制度設計が煮詰まっておらず、政府・与党が積極的に情報を開示したり、丁寧な説明をしたりしてこなかった姿勢を批判していることも同じだ。

 ただ、改正案の可決・成立を前提にした制度設計の前向きな、具体的な提言などは見られてはいない。「移民」はどれくらいの規模を上限とすべきと考えるのか、外国人労働者の受け入れ拡大によって日本人の雇用や所得に悪影響が生じないためにどのような方策がありうるのか、外国人材の地域偏在をいかに解消するのか…。これだけの大きなテーマについて、主要紙は今こそ競うように具体策を提案してほしいと願うことは、無理なことなのだろうか。

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言論ドットコム編集部

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