世の中には「それは、やったらあかんやろ!」というものがある。代表者によって定められた法令を持ち出すまでもなく、みんなで決めたルール、人として「守る」べき一線ともいえるだろう。スポーツで言えば、サッカーは手を使ってはいけないし、ラグビーはボールを手で前に進めてはいけない。ビジネスで契約不履行を行えば会社の信用は失墜し、社長の信頼は地に落ちる。子供の世界でも「後出しジャンケン」をすればダメなことは誰もが知っている。だが、どうも「かの国」では常識が異なるらしい。

 第二次世界大戦中に徴用工などとして動員された韓国人が三菱重工業を相手に損害賠償を求めた2件の訴訟で、韓国の大法院(最高裁)は11月29日、三菱重工業の上告を棄却。1人当たり8000万~1億5000万ウォンの賠償を命じた。大法院は10月30日にも元徴用工をめぐる訴訟で新日鉄住金に賠償を命じた判決を確定しており、今後の同様の訴訟でも日系企業に賠償を命じる判決が続く見通しだ。

 だが、日本と韓国の間では、1965年の「日韓請求権・経済協力協定」で請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」ことを確認している。この協定は、署名日(6月22日)以前に生じた全ての請求権についても「いかなる主張もすることができない」としており、いきなり53年後に「やっぱり、あれはナシにしてくれない?」とすることがダメなことは子供でもわかることだろう。当然ながら、これは国と国が結んだ約束を一方的に反故にしたばかりか、国際社会のルールを無視した暴挙である。
 
 河野太郎外相は談話を発表し、「1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない」と反発。菅義偉官房長官は11月29日の記者会見で「韓国には国際法違反の是正を含め、適切な措置を講じることを強く求める。講じられない場合には、国際裁判や対抗措置を視野に入れ、毅然とした対応を取る」と述べた。当面は、韓国側の動向を見極める方針という。

 ここで、韓国が行った「ルール無視」とは何か、なぜ政府は韓国サイドの動きを待つのかについて触れておきたい。その点、分かりやすい質疑だったのが11月29日の衆議院安全保障委員会だ。質問に立ったのは、会派「未来日本」の長島昭久衆議院議員である。まずは、その質疑の模様を書き起こしたのでご覧いただきたい。

長島昭久氏
「新会派・未来日本の長島昭久です。両大臣、大変お疲れ様です。10分ですから簡潔に御答弁をいただきたいと思います。本日の午前中にまた韓国の最高裁大法院におきまして新たな最高裁判決が出ました。10月30日の新日鉄(住金)に続いて今度は三菱重工(業)にも賠償命令ということになったわけでありますが、こんなことを続けているとですね、日韓関係、本当に破壊されますし、韓国でビジネスをやっていられないという話になりますよね。河野大臣におかれましてはですね、どこかでケリをつけてもらいたいと。負の連鎖をどこかで止めないといけないと思うんですが、まず今日の判決に対するご所見を伺いたいと思います」

河野外相
「前回の大法院の判決、今回の大法院の判決を含めですね、この日韓請求権・経済協力協定に明らかに違反をし、1965年以来の国交正常化以来築いてきた日韓両国の関係のもっとも根本的な法的基盤を覆してしまうもので、これは極めて遺憾であり、断じて受け入れることができません。韓国に対して、こういう国際法違反の状況をなるべく早く是正することを含め適切な措置を講ずるよう求めてきておりますので、韓国側にしっかりとですね、対応をしていただきたいと思っているところであります」

長島氏
「いま大臣から国際法違反という話がありましたが、いくつか今日はそういう意味で確認をさせていただきたいことがあります。1つはまさに議論の大前提、国際条約のことについてですが、条約国に関するウイーン条約というものがあります。第26条、効力を有するすべての条約は当事国を拘束し、当事国はこれらの条約を誠実に履行しなければならない。27条、当事国は条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することはできない。これは、国内法だけではなくて国内事情を理由にしてはならないと解されるそうでありますが、これは当事国というのですから行政府や立法府のみならず、司法府も当然のことながら拘束することになるんだろうと思いますが、韓国はこのウイーン条約を批准しているんでしょうか」

河野外相
「すみません。事前に通告がないものですから確認しているところでございます」

長島氏
「してますよね」

外務省
「申し訳ありません。韓国も批准をしております」

長島氏
「批准もしておりますし、韓国の憲法も私は調べてみましたが、韓国の憲法第6条は、我が国の第98条2項とほぼ同じ、国際法順守の条文がございます。従いまして、ここまで条件がそろえばですね、こういった判決は当然のことながら出てこないはずなんですが、そこで大臣にもう1つ確認をしたいんですが、個人の請求権という話がこの間何度も出てくるわけでございまして、今回の韓国の大法院の判決はですね、元徴用工、これは私共は旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる徴用工ですか、元徴用工の個人の請求権は消滅していないんだという判断を下しております。日本政府は柳井俊二条約局長の答弁にはじめですね、これまでも累次にわたって請求権協定によって日韓両国間の請求権問題が解決されたとしても被害に遭った個人の請求権を消滅させることはできないと、こういう答弁を繰り返してきているわけですが、この点を加味しながらですね、本当にこの日韓の間で最終かつ完全にこの請求権の問題が解決したと言い切れる、その理由を述べていただきたいと思います」

外務省
「お答えを申し上げます。個人の請求権を含め、日韓間の請求権の問題は日韓請求権・経済協力協定により、完全かつ最終的に解決済みであるというのが我が国政府の一貫した立場であります。具体的には、日韓両国は同協定第2条1で、請求権の問題は完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認しております。また、第2条3で一方の締約国およびその国民の他方の締約国および国民に対するすべての請求権に対して、いかなる主張もすることができないとしておりますことから、請求権を含め、一切の個人の請求権は法的に救済されないということであります」

長島氏
「いま救済されないとされましたけども、訴える権利は保証されているんでしょうか。個々人が

外務省
国内法的に請求権そのものが消滅したという言い方はしておりません。訴えることはできますけれども、それがですね、それに応ずべき法律用の義務は消滅しておりますので、救済が拒否されることになるという整理でございます

長島氏
「訴える権利はあるんだけども、救済されないと、こういう説明だと思うんですけども、じゃあ誰が、どこが救済の義務をおっているんでしょう。これは日韓の合意の中で

外務省
「先程も申し上げましたように、この請求権の問題につきましては日韓請求権・経済協力協定によって、日韓の間でですね、完全かつ最終的に解決済みであるということでございます」

長島氏
「いや、ちょっとよく最後わからないんですけど。要するに個人の請求権、訴えることはできると。しかし、それは裁判所に持ち込んでも救済されないんだと。その根拠は何ですかと聞いているんです」

外務省
「先程も申し上げましたように、権利そのものは消えるということは申し上げてはおりませんけども、その日韓協定におきまして、明確に完全かつ最終的に解決された、それから、いかなる主張も請求権に関してはすることができないということがセットになっておりますので、これが全体としてですね、この問題については解決済みであって、法律上の救済ができないということでございます

長島氏
「大臣ですね、これ救済の道義的責任は韓国政府がおうというのが韓国の政府の認識でもあり、日韓間のコンセンサスではないんですか。それは2005年の盧武鉉政権の時に、これは軍事政権ではなくて民主化された政権ですよ、当然のことながら。その時に外交文書を全部公開して、その上で官民合同チームできちんと再検証した結果、この救済についての責任は、道義的責任は、韓国政府は負うものだと、そういう結論であると認識しているんですけど、そうであるからこそ、今回強い態度に日本は出られると認識しているんですが、いかがですか」

外務省
「お答え申し上げます。委員御指摘の通り、盧武鉉政権時代、2005年におきまして、盧武鉉政権の総理主催のもとの官民共同委員会において日韓請求権・経済協力協定の法的効力の範囲および韓国政府の対策の方向等について検討した結果を発表しました。その中で官民共同委員会はこの旧朝鮮半島出身労働者に関連して、請求権協定を通じて日本から受け取った無償3億ドルは強制動員、被害補償問題解決の性格の資金等について、包括的に勘案されているとして、政府は受領した無償資金のうち、相当金額を強制動員、被害者の救済に使わなければならない道義的責任があるという内容を発表していると承知しております」

長島氏
「ですから、それに基づいて2007年、2010年、韓国は国内法をわざわざつくって、支援を行っているんですよ。これは確認できませんけども、おそらく今回の原告の方たちもですね、これに基づいて支援を受けているはずなんですね。こういうことも、ぜひ調べていただいて、最後に大臣、このまま角をつけ合っても仕方がないと思うんですが、私1つ提案があります。仲裁委員会をぜひ開いていただきたい。なぜならば、このままずっと韓国政府の姿勢を待っていては、どんどんこのような訴訟が起こってしまう可能性がありますので、それにも歯止めをかける上でも仲裁委員会をぜひ開いてもらいたいと思いますが、最後に一言お願い致します」

河野外相
当然にそうしたことも視野に入れて政府として対応を考えております

《2 「現実的な解決の方策は何か」に続く》

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言論ドットコム編集部

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