世界で高まる「和牛」人気。国産牛肉の輸出は過去最多ペースで増えていますが、その一方で、オーストラリア産「WAGYU」がアジアなどの海外市場で躍進しています。オーストラリア産「WAGYU」の他にも米国産「WAGYU」があり、「WAGYU」は今や高級牛肉の代名詞ともなっているそうですが、もともとは日本の「和牛」の遺伝子が海外に渡ったものです。現在は法規制により精液・受精卵は持ち出すことができないことになっているはずですが、その規制を潜り抜ける事案が発生しました。

「輸出禁止の和牛精液が日本国外へ不正に持ち出されていた」

「中国入国時に見つかり中国国内への流出は水際でとめられたが、日本の検査はすり抜けており、検査体制の甘さが浮き彫りになった」

 日本農業新聞(2018年11月26日)に掲載された記事の内容です。

 この記事について農林水産省に確認をしたところ、本年7月に和牛の精液ではなく受精卵を持ち出そうとした事案があったとのことでした。受精卵であればより深刻な問題です。国会において農林水産省にさらに詳細な事実関係について質問したところ、

 「牛の精液や受精卵を海外に持ち出す場合には、家畜伝染病予防法に基づき、動物検疫所の輸出検査を受ける必要があるが、この検査を受けずに受精卵が入っていたとみられるストロー480本を海外に持ち出した者がいる」「中国当局に輸入を止められ、日本に帰った際に動物検疫所に申告があり、輸入検査証明書がないので放棄してもらった」「その場で持ち出した者に厳重注意をした。現在、事実関係の調査をしており、刑事告発も検討している」などの説明がありました。

国内産地の脅威に

 私は、大量の受精卵を持ち出そうとしていることから、組織的な関与の疑いが強い事案だと思っており、持ち出した者に対する厳重注意では非常に甘いと感じ、徹底的な事実関係の究明を求めました。

 平昌冬季オリンピックで銅メダルを獲得したカーリング女子日本代表が試合中の休憩時間に食べていたイチゴ。このイチゴももともとは日本の品種ですが、韓国に渡ったものが品種改良され、現在はタイなどのアジアマーケットに輸出されています。日本の品種であるぶどうのシャインマスカット。これも中国に移入され急速に栽培・販売が広がり、日本国内の産地の脅威になっています。このような状況を踏まえ、フルーツなどの植物については国内的には種苗法で知的財産権の一つとして保護し、海外においても品種登録を行えば育成者の権利が保護される取組みが進められています。政府もこの取組みを全面的にバックアップしており、品種登録や侵害対応にかかる経費を支援することになっています。

 他方、和牛などの動物に関しては、種苗法に対応するような法律はなく、今回の事案のように、あくまでも家畜伝染病の予防という視点からの対応にとどまっています。

 「和牛」は、畜産関係者が長年かけてつくり上げ、日本の世界に誇るブランドの一つとなっており、その遺伝資源は日本全体の宝です。今回の事案については深刻な反省のもと、危機意識を強めて徹底的に事実関係を解明し、法的措置を含む実効性のある再発防止策を講じなければなりません。

 グローバル化が進展する中、各国とも自国産品ブランドを守るのに必死です。日本も本腰を入れてニッポン・ブランドを守っていかなければなりません。

The following two tabs change content below.
衆議院議員 井上一徳
1962年7月31日生まれ、京都府舞鶴市出身。横浜国立大学卒。1986年に 防衛庁入庁。防衛省沖縄防衛局長、防衛省大臣官房審議官などを経て、2017年から衆議院議員。