今回の寄稿では、介護保険サービスの体系と、どのような状況の時にどういったサービスが具体的に活用されているのかをご説明します。

<施設と居宅>

 基本的に、自宅とは別の施設に入所して1日中その施設でサービスを受ける場合を施設サービスといいます。特別養護老人ホーム(特養)や、介護老人保健施設(老健)などに入所する場合がこれにあたります。一方で、自宅に住みながら、日中帯などにサービスを受ける場合を居宅サービスといい、自宅にヘルパー(介護士)や看護師に来てもらったり、日中だけ施設に行って入浴のサービスを受けたり(デイサービス)する場合がこれにあたります。

 施設サービスは、24時間介護職が同じ建物内にいてくれるサービスであり、特に特別養護老人ホームは看取りまで入所できる終身施設であるため、重い介護状態の方にとって需要が高いサービスになっています。一方で、介護が必要になってすぐにこういった施設に入所するケースは珍しく、ほとんどの方は、介護が必要な状態になると、はじめに居宅サービスを活用することになります。

 居宅サービスの中で、利用者数の多い訪問サービスである訪問介護と訪問看護についてまず説明します。訪問介護では、資格を持ったホームヘルパーが自宅を訪問し、介護サービスを提供します。

 サービスの種類は、入浴介助や排泄介助、移動の介助、食事介助などの身体介護サービスと、掃除や買物、調理、洗濯などの生活援助サービスがあります。このように訪問介護で提供できるサービスは広範囲となっているため、あまり介護が必要でない方から重度の要介護状態の方まで、様々な方に活用されています。訪問看護は、定期的に看護師が自宅を訪問して医療的な管理を行うサービスです。サービスの内容は、寝たきりの方の床ずれの処置や、医療的な支援が必要な方の入浴介助などとなっています。

 ご家族が同居して訪問サービスを受ける場合、サービスがない時間帯はご家族が介護に携わることが多く、ご家族にとって身体的精神的負担がかかる場合もあります(その代わり、金銭的な負担は通常施設サービスよりも少なくなります)。こういった身体的精神的負担を軽減するために、ショートステイ(短期入所)やデイサービス(通所介護)といった通いサービスが、居宅サービスの一部として組み込まれています。

 ショートステイとは、普段自宅で介護を受けている方が、一定期間(4日間~2週間ほど)施設に滞在する介護サービスです。施設で24時間介護が受けられる状態になりますので、ご家族が仕事や旅行で一定期間不在の場合や、ご家族の休息時間を確保する場合に有効なサービスとなっています。デイサービスは、朝夕の送迎で施設に通い、日中時間だけ食事や入浴などの介護を受けるサービスです。こちらは、ご家族が仕事で日中不在のことが多い場合や、1人暮らしの方に適したサービスだと言えます。

<介護が開始される典型的な事例>

 次に、介護が開始される典型的な事例を2つご紹介します。介護が必要になるタイミングには、身体機能面として1人で外出できなくなった時、認知機能面として外出先から自宅に1人で戻れなくなった時などがあります。高齢の方が自身の介護について語るときに「家族には迷惑をかけたくない」という方が多くいらっしゃいます。

 ところが、実際には家族に迷惑をかけないための準備を事前にしている人はほとんどおらず、「少し体や頭に違和感があるけれど迷惑をかけたくないので黙っていよう」と我慢した結果、介護が必要だと判明したときに本人とご家族が大混乱になるというケースもよく見受けられます。いくつかの事例を見ておくことで、今後のご自身またはご家族の介護について予め準備する際に役立つでしょう。

 身体機能低下に伴って介護が開始されるケースとして多いのは、脳梗塞や脳内出血等で入院し、その後遺症で半身麻痺になって自宅に戻ってくるケースです。お1人暮らしかご家族同居かでサービス内容は多少異なりますが、概ね、毎日朝夕の更衣介助や起床・就寝介助と週1~2回の掃除・買物等で訪問介護を活用し、週2回程度デイサービスに通われる、というパターンが多いように見受けられます。この場合の費用は、介護保険制度を活用したサービス提供を受けることで、月額概ね5万円程度でおさえることができます。

 認知機能低下に伴って介護が開始されるケースとして多いのは、お1人暮らしの方が、外出先から自宅に戻ることができず、自宅近くの警察署からご家族のところに連絡が来る、といったケースです。高齢者の認知症の症状は、記憶障害や見当識障害などの中核症状と徘徊や幻覚、暴力行為などの周辺症状に分類され、介護において負担が大きいのは周辺症状への対応です。自宅でご家族が面倒を見続けるのは身体的精神的にも負担が大きいため、デイサービスやショートステイの利用割合を一定程度高くすることが望ましく、状況によっては週4回以上デイサービスに通う方もいらっしゃいます。

 費用はこの場合でも月額概ね5万円程度でおさまるケースが多いです。また、経済的に余裕がある方については、この段階で有料老人ホームとよばれる24時間介護サービスを提供してくれる施設に入居される場合もあります。この場合には、家賃や食費込みで月額概ね20万円から30万円の費用がかかってしまうことになります。

<社会政策としての介護>

 最後に、介護保険制度の課題を考察し、次回の寄稿で提言する解決策への筋道を作って今回の寄稿を締めたいと思います。

 上記の介護事例ででてきた典型的なサービス費用が比較的リーズナブルな範囲でおさまっているのは、介護保険制度を活用しているからに他なりません。サービス受給者側が支払う費用は原則として全体の1~3割のため、残りの7~9割は国民健康保険団体連合会が支払う形になっています。高齢者の数が今後も増加傾向にあるため、社会全体の介護費用も増加することになり、将来の財源不足が不安視されています。

 介護保険制度のもう一つの課題が人材不足です。サービス受給者の伸びに合わせてサービス提供者の数も増やす必要があるのですが、これまでのところその施策は成功しているとは言い難く、慢性的な人不足に陥っている状況です。

 この2点のより詳細な考察と解決策を、次回の寄稿で論じていく予定です。 

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ケアリッツ・アンド・パートナーズ 宮本剛宏
慶應義塾大学環境情報学部卒。繊維メーカーやITコンサルティング会社を経て、訪問介護を中心とする介護事業で2008年に起業。株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ代表取締役社長。
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