11月18日投開票の沖縄県知事選をめぐる情勢が流動化している。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事に反対する翁長雄志知事が4月に膵臓がんの手術を受け、選挙公約だった辺野古移設阻止の行方が不透明になっているからだ。任期(12月9日)中の実現はおろか、11月の知事選への不出馬説も取り沙汰され、その一挙手一投足に注目が集まっている。

 2月の名護市長選や4月の沖縄市長選など沖縄県内の重要選挙では、翁長氏が推した候補が敗れ、翁長氏の支持基盤「オール沖縄」から県内有力経営者が相次いで離脱した。翁長氏を支持する政党や団体幹部らは4月17日に翁長氏擁立を目指す方針を決定しているが、仮に翁長氏が知事選に立候補したとしても、再選できる保証はない。

 「これはピンチだ。相当な危機感を持たなければいけない」。こう語るのは、オール沖縄陣営ではない。4年ぶりの県政奪還に燃える複数の自民党県連幹部だ。表面上は翁長氏が苦境に陥っているように見えるが、実は自民党が知事選で厳しい戦いを強いられる可能性が高まっているという。

 翁長氏は元々、市長選での敗北やオール沖縄からの企業関係者離脱により、再選は容易ではないと見られていた。こうした中での病状発表は、不出馬に向けた環境整備というのが自民党側の見方だ。自民党沖縄県連幹部は「政治家が腫瘍を発表するのは異例中の異例だ。病気を理由に『知事選出馬断念』を発表して後継候補を指名し、オール沖縄に同情票を集めようとする戦略ではないのか」といぶかる。

 9月9日には名護市議選など10市町村以上で議員選挙が予定されているが、これに合わせて「翁長氏が辞任」すると見る地元関係者は少なくない。9月には自民党総裁選もあり、自民党幹部や小泉進次郎筆頭副幹事長らが大挙して沖縄入りすることは難しくなる。この「9月選挙」で勢いを取り戻し、オール沖縄が非自民候補を当選に結び付けるシナリオというわけだ。

 自民党は、県連などでつくる候補者選考委員会から出馬要請を受けた佐喜真淳宜野湾市長が7月11日、首相官邸で菅義偉官房長官に対して出馬に前向きな意向を伝えたことにより、「決戦」に向けた準備を進めている。しかし、翁長氏の不出馬説が浮上していることで別の問題も生じてきている。

 自民党県連関係者の1人は「もしも翁長氏が出ないとなれば、『自分でも勝てる』と思う人たちが手を挙げて収拾がつかなくなる」と表情を曇らせる。すでに元沖縄観光コンベンションビューロー会長の安里繁信氏も立候補に意欲を見せており、最終的な候補者の一本化作業はまだ時間が必要となりそうだ。

 11月1日の告示まで4カ月を切る中、翁長氏はいまだ知事選に向けた態度を明らかにしておらず、病身をおして出馬に踏み切る可能性もある。普天間移設問題が知事選最大の争点であることは間違いないものの、翁長氏の去就がどのように作用するかは見通せない状況となっている。

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