■児童相談所の機能強化を

 児相の現場の声を聞くと、個々の児童相談所の機能強化は待ったなしだと感じる。緊急通報への対応が続き、親との面談の際は、身の危険を感じることもあるという。児相で働く皆さんは頑張っておられる。しかし、「実親と同等の支援」ができているかと問われれば、答えはノーだ。複雑な事情を抱えた家庭と向き合い、虐待に合っている子どもを親から引き離し、里親や特別養子縁組を行うだけの時間的、精神的余裕は到底ない。

 結愛ちゃんは、父親に虐待されている事実を訴え、「家に帰りたくない」と話していた。5歳の女の子が勇気を振り絞って自らの意思を伝えたにも関わらず、彼女は家庭に返され、その結果として命を奪われたのだ。

 私は、児童相談所への弁護士の常駐は必須だと考えている。児相は、虐待などで子どもが危険な状態にあると判断した時、親が同意しなくても、児童福祉法28条に基づいて児相が裁判所に申し立てて認められれば、子どもを一時的に親元から引き離す「一時保護」ができる。しかし、親との関係を気にして、子どもを親から引き離すことを躊躇するケースも少なくない。私が会った児相の職員も、その判断が最も難しいと話していた。

 数は少ないが、弁護士がケースワーカーとして常駐している児相がある。そうした児相では、日常的に法律家に相談できる体制ができている。必要な予算は国ですでに整備されており、期限付きの任用形式を取れば、常勤スタッフとして児相で働くことを希望する弁護士は全国にいる。しかし、ここでも地方の動きは鈍い。

 同時に、児童福祉司の専門資格化も急がれる。現在の児童福祉司は、地方自治体による「任用資格」となっており、専門性のない都道府県の職員が、児相に配置されるケースもある。子どもの状況把握、親とのコミュニケーションなど、児相の職員に求められる能力は多岐にわたる。早急に国家資格化を実現すべきだ。

 また、家庭との関係を重視して、子どもの保護を後回しにする傾向を改めるためには、児相の中で、「初期対応」と「支援」の機能を分ける必要がある。虐待への初期対応において最も優先されるべきは、当然にして子どもの安全だ。両者の連携は必要だとしても、トレードオフの関係になりえる両機能を同じ職員が担当するのは望ましくない。

 これらの課題を解決するためには、児童福祉法などの抜本改正が必要だ。当然、予算も増やさねばならない。心ある議員と力を合わせて、できるだけ早く結果を出さなければならない。

■幼稚園にも保育園にも通っていない子どもたち

 潜在的な虐待にも目を向ける必要がある。結愛ちゃんが亡くなったのは5歳。彼女は幼稚園にも保育園にも通わせてもらえず、社会的にも家庭の中でも孤立していた。3歳までは、母子保健法で健診が義務付けられているため、自治体が子どもの状況を把握することができる。また、義務教育となる就学前には、自治体が子どもの状況を把握することができる。問題はその間の3年間だ。

 3歳から5歳児の中で、幼稚園にも保育園にも通っていない子どもの数は約20万人。おそらく、ほとんどの方はその存在に気が付いていないのではないだろうか。実は、行政もこれまで、こうした子どもの実情を把握していなかったのだ。私の提案で、昨年7月に全国の自治体に通達がだされ、12月5日までに調査が実施された。政府の実態把握はこれからだ。

 児童相談所がケースとして関与する3歳から5歳の子どもの中で、幼稚園にも保育園にも通っていない割合は2割から3割とのこと。これは相当に高い。20万人の中には、無認可保育所や病院にいる子どもも含まれるが、虐待が潜んでいる可能性が高い。幼稚園の先生や保育園の保育士と話すと、子どもが虐待されていれば、ほぼ分かるという。すべての子どもが幼稚園か保育園に通うことができれば、通報の迅速化や虐待の予防につながるだろう。

 今の時代に、幼児期の教育の機会を与られていない子どもが20万人もいること自体、見過ごすことができないと思う。人生の出発点ぐらいは、平等が確保されて然るべきだ。幼稚園、保育園は実質的に無償になりつつある。これを機に、3歳を迎えた家庭については、市町村が幼稚園か保育園に通うことを強く促すべきだと私は考えている。

■強すぎる親権について考える

 虐待や児童養護施設を見ていく中で、問題の根本にあるのは「強すぎる親権」だと感じてきた。一般に、親権とは、未成年者に達しない子を監護、教育し、その財産を管理するため、その父母に与えられた身分上および財産上の権利・義務のことを言う。わが国では、親の「子に対する支配権」として親権を捉える向きがあるが、私は、親権は、子どもを保護し、その人権を守るためのものであり、その目的が達成されないのであれば、制限されるべきだと考えている。

 親権の最たるものは、体罰を容認する懲戒権だろう。親権の規定の変更は、民法改正に関わる重たいテーマだ。当面は、児童福祉法改正などが優先されるとしても、並行して、親権規定の変更についても議論する必要がある。

 現実の親権は強い。児童養護施設に入る際も、里親や特別養子縁組の家庭に入る場合も、家庭裁判所の勧告がある例外的なケース以外では、親権を持つ親の同意が必要だ。行先の決まらない子どもは一時保護所に入れられ、その間、学校に行くことすらできない。

 児童相談所や児童養護施設では、「虐待されている子どもも、親と会いたがる」という話をよく耳にする。どんな親であっても、子どもにとっては特別な存在なのだ。子どもはそれ以外の選択肢があることを知らないのだ。

 しかし、子どもは親の持ち物ではないはずだ。2016年、わが国の親権停止は、わずかに83件に過ぎない。ドイツでは毎年1万以上、英国では毎年5万以上の親の親権が停止され、ほとんどの子どもは、新しい親と共に生活している。

 一昨年、策定された「新しい社会的養育ビジョン」では、里親委託率を3歳未満児は概ね5年以内に75%、それ以上の就学前は概ね7年以内に75%、学童期以降は概ね10年以内に50%という目標が明示された。現在、都道府県が計画を策定中だが、自治体によって温度差がある。英国は地方の責任とされているようだが、地方の現状を考えると、わが国ではもっと国が強く働きかけるべきだ。

 親とは何か。家族とは血のつながりを言うのか。私は違うと思う。育てられない親、育てる資格のない親が現実にいる。そのようなケースでは、乳児を含めて子どもたちに、それ以外の選択肢を示すのが、社会の責任だと私は思う。

 私が政治理念として掲げているダイバーシティに関わる問題がここにもある。

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衆議院議員 細野豪志
1971年生まれ、滋賀県出身。京大法学部卒業後、三和総研(現東京三菱UFJリサーチ&コンサルティング)研究員を経て、2000年の衆議院選挙で初当選。2011年、首相補佐官、東日本大震災対応で原発事故担当大臣、環境大臣。2017年 民進党を離党し希望の党設立。希望の党解党に伴い現在は無所属(7期目)。衆議院静岡5区
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