小籠包にマンゴーかき氷、親日的でどこか懐かしさを感じさせる市井の人々…。
多くの日本人にとっての台湾は、そんな旅行先のイメージだろうか。だが、実際の台湾は、3度の政権交代を経た民主主義社会であり、「独立主権国家」を主張する政府が存在する。日米など世界の大多数の国は「台湾は中国の一部だ」などとする中国政府の主張に配慮し台湾を国家として扱っていないものの、現在も18カ国が台湾を「中華民国」として認め、「国交」を有する。

 その台湾を統治する民進党の蔡英文政権は今、中国からの圧力にさらされ続けている。中国が主張する「1つの中国」原則を受け入れていないためだ。中国大陸に由来する国民党の馬英九前政権は、対内的に「中国」は「中華民国」の意味で「中華人民共和国」ではないと説明することで、中国側に歩調を合わせた。だが、民主化の過程で台湾土着の人々を中心に結成され、「中華民国」にすら反感を持つ層を支持者に抱える民進党の蔡政権に、その選択肢はない。

 その結果、2016年5月に蔡政権が発足して以降、中国は台湾の「国交国」を22カ国から18カ国に減らし、国民党の馬英九前政権時代には認めた世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)総会への出席を妨害するなどの外交圧力を強化。台湾周辺での爆撃機飛行回数を増やしたり空母「遼寧」を台湾周辺海域で航行させたりと、軍事的な圧力も徐々に強めている。

 台湾はこれまで、日本側に過度の期待をしてこなかった。だが、2011年の東日本大震災直後に台湾から多額の寄付金が送られたことで、日本の世論が台湾を再評価。親台派の安倍政権が2012年に発足したこともあり、尖閣諸島の扱いをめぐり長年の懸案だった日台漁業取り決めが2013年に締結されるなど、日台関係は大きく進展してきた。
 中国の圧力にさらされる蔡政権にとり、日本は米国に次ぐ重要な友好国であるに違いない。台湾側が目下、表だって求めているのは、日台自由貿易協定(FTA)の締結や環太平洋経済連携協定(新TPP)への加盟支援といった経済分野での取り組みだ。だが、これらはいずれも、中国に経済的に取り込まれないための後ろ盾を求めているのだと理解すべきだ。

 台湾が本当に日本に求めているものは、WHOなどの国際組織に参加するための精神的なサポート以上の具体的な支援だろう。また、安全保障上の協力も本来であれば深めたいはずだ。日中関係への配慮から当局間の取り組みが難しいのであれば、まずは「トラックⅡ」と呼ばれる民間レベルの研究機関の交流で、日台共通の脅威認識を形成するような取り組みを強化しても良い。その後、人道支援・災害救援(HA/DR)での協力や訓練を通じ、軍事レベルに至らない法執行機関同士の直接交流に引き上げて行く方法もあろう。台湾側が日本に求めているのは、こうした実務的な知恵であり、それを実行に移す勇気である。

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言論ドットコム編集部

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