バンダルスリブガワンはどこの国の首都?と聞かれてすぐに答えられる人は多くないんじゃないでしょうか。

 答えはブルネイです。

首都の中心にあるスルタン・オマール・アリ・サイフディン・モスク


 マレーシアとインドネシアで大きく領土を分け合っているボルネオ島ですが、ブルネイはマレーシアに囲まれるようにしてポツンと存在します。日本からもあまり遠くない東南アジアに位置しており、ASEANの一員でもあります。石油や天然ガスが主な産業ですが、その天然ガスの85%は日本に輸出していたり、日本とも非常に強い関係性をもっています。


 しかし、なにせ人口が43万人しかいませんから、いささかマイナーなのも仕方ないかしれませんね。今回はこのブルネイに陸路でマレーシアから入国し、10日ほど滞在してみました。

ブルネイのイメージは?

 先日大きく話題になったブルネイのニュースに、同性愛には死刑を適用するという制度がありました。このニュースは世界からはなんと非近代的な法律だ、という批判の目と驚きでもって迎えられたかと思います。

 しかし、実際のところ死刑はここ数年全く行われたことがなく、イスラム法に厳格に法整備をしただけというのが実体のようです。私たちからするととても考えられない発想ですが、残念ながらイスラム教の国々ではそういう解釈をしているところがいくつかあります。そして、そういう考え方自体に世界からの厳しい目が向くのは致し方ありません。しかしそれだけでブルネイを前近代的で恐ろしい国と考えてしまうのは早計です。

 そして、もう1つのイメージがオイルマネーの富裕国というものでしょうか。これもその通りで、平均所得も世界Top10に入るくらいに高く、車の所有率は平均して一人1.5台以上。スルタンであるハサナル・ボルキアははロールスロイスを世界で一番所有しているという有名なお金持ちの一人です。ブルネイ人の日本への旅行も盛んで、成田空港であたりでイスラム様式の服装に身を包んだ人々が実はブルネイ人だったなんてこともよくあるでしょう。

ブルネイの繁華街の一つガドン。車社会なので少しアメリカ風の雰囲気もありますが、並んだ椰子の木は南国であることを思い出させます。


 ブルネイは近隣のマレーシアやインドネシアと比べるととりわけ厳格なイスラム教の国であることは間違いありません。とはいえ、それほど閉鎖的な訳でもありません。湾岸諸国のサウジアラビアなどは外国人の気楽な旅行ができなかったりしますが、ブルネイの場合は日本人もビザなしで気楽に旅行することができます。陸路入国も可能ですし、シンガポールからは頻繁に便が出ています。マレー語が公用語ですが、街では大抵の人が英語も通じます。この辺り教育レベルの高さも感じさせます。

 ただし、お酒はご法度。持ち込むこともできません。お酒が好きなブルネイ人や移民は、お隣のマレーシアまで出かけてバーに行ったりするようです。そのためマレーシア側の国境の町にはバーがいくつかあります(マレーシアでも酒はおおっぴらに飲むものではないのでなんだかアングラな雰囲気が漂っています)。

ブルネイのベーシックインカム?

 一人数万円~というのは定かではなくまた資料にも乏しいのですが、基本の手当てがありそれが様々な条件によって変わっていくとのことです。家なども政府の管理下の元で分け与えられます。加えて、教育や医療、税金も無料なので(医師の診断を受けるのは正確には1ブルネイドル(1$ = 約80円)、人々はオイルマネーの恩恵を十分に受け充実した福祉を享受しています。

ショッピングセンターで働く人々


 しかし、ブルネイは通常の資本主義国です。それほど多くないものの普通に店はありスーパーはあり人々が働いています。レストランやホテルなどの料金がかなり安いのでそれを考えると、賃金はそれほど高くないでしょう。加えてベーシックインカムがあると、労働意欲がなくなるのでは。。。なんて思ってしまうのですが、どうやら、そういうことでもないようで、働き手が不足しているという事態にはなっていません。

商店街のディスプレイ


 街では出稼ぎの人(インド人など)もブルネイ人も多く働いています。しかし、その働きぶりはゆったりしたもの。公共施設や店などは早く閉まりますし、夜には街全体にも穏やかな時間が流れます。ちなみにブルネイにはなんといまだ最低賃金の設定がありません。日本のような社会から見ると、いささか不思議な経済制度に見えます。

実際の滞在はどうなのか

バンダルスリブガワンのモール The Mall


 オイルマネーの富裕国だし、物価がすごい高かったりしないか?はたまた、禁欲的すぎて何もないのか?なんて思っていました。実際行ってみると、モールなどもそれなりにあり、取り立てて不便な目にあうこともありません。カフェや、レストランなんかも価格帯の割に非常にクオリティが高く、洗練されています。

 ただ、公共交通機関がほとんどありません。一応バスはあるのですが、時刻表もなくいつ来るかもいい加減、夜も早く終わってしまいます)。ほとんどの人が車を持っているということにも由来するでしょう。物価はクラルンプールと同程度という感じでしょうか、特に同じ通貨が通用するシンガポールと比べるととてもやすく感じます。「1ブルネイドルは1シンガポールドル」です。ちなみにブルネイでシンガポールドルはだいたい使えますが、シンガポールでブルネイドルは使えないことが多いです。

ブルネイでは寿司屋も人気です


 また治安も極めてよく、「犯罪がないから警察はいらないよ」なんてブルネイ人はいいますが、実際に犯罪がないかはまあともかく、危ない雰囲気はありません。


 ブルネイは封建的な制度を残した過去にも感じますし、整然としたたたずまいはどことなく未来のようにも感じます。
 

 さらに、ブルネイには世界で二つしかない7つ星のホテルのうち一つがあったり(もう1つはドバイ)。意外と日本食が人気だったり、水上住宅があったりとここでは書ききれない興味深いことがたくさんあります。
しかし、みると聞くとでは大違いのブルネイです。一度足を運んでみると、東南アジア諸国のイメージが打ち破られること必至です。これも日本人が知らない「アジア」の形なのです。

ジャミ・アス・ハナサル・ボルキア・モスク

 

市内の川はゴミが1つもない

 

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バイラルワークス 早川大地
1977年東京生まれ。アプリ・音楽・メディア制作を行う株式会社バイラルワークス代表。自身もエンジニア、音楽プロデューサーとしての顔を持つ。現在は東南・東アジア、欧州、中米など1~2カ月ごとに国を移り、十数カ国を渡り歩く「移住生活」を行っている。