安倍晋三首相(党総裁)は9月11日、内閣改造と自民党役員人事を行う。首相が語ったキーワードは「安定と挑戦」で、内閣の要である菅義偉官房長官や麻生太郎副総理兼財務相は留任させる一方、初入閣組を積極的に起用する「挑戦的な布陣」とする見通しだ。言論ドットコム編集部は今回、その最大の焦点といわれている「幹事長人事」について取材した。

 今回の内閣改造と自民党役員人事で、メディアの注目は二階俊博幹事長が交代するか否かにある。安倍首相はこれまでの国政選挙を勝利に導いてきた手腕を評価しているものの、自身に近い細田派の国会議員から「もう二階氏は交代すべき」との声がわき上がる。

背景には、首相側近たちの「妬み」

 今の首相官邸の住人たちは「自分たちよりも目立つ人、力を持つ人をとにかく嫌う」(ベテラン議員)とされ、二階幹事長が自身の派閥に野党だった国会議員を勧誘したり、幹事長が持つ「カネ」の力を見せつけたりする点をあまり面白く思ってはいないようだ。

 それは「妬み」に近いものがある。二階幹事長の「交代論」は首相の最側近議員から起こっているが、その背景には菅官房長官らの思惑もあるとみられている。菅官房長官は、以前は自らの幹事長就任に意欲を見せていたが、現在ではその思いもなくなっている。「幹事長よりも政府内の情報を統括できる官房長官の方が良い」というわけだ。

 ただ、問題は二階氏の後任がなかなか見つからないことにある。首相は「与党は人材の宝庫」とするものの、巨大与党を率いる「辣腕幹事長」を見つけるのは容易ではない。ベテラン議員の多くはすでに役職の多くを終えて「御意見番」となっており、二階氏に匹敵する人物は不在なのが実情だ。

二階氏続投か、岸田氏昇格の二択に

 そこで官邸サイドの意向を探ると、一人の名前が浮かび上がる。その男とは、安倍首相からの「禅譲」をひたすら期待する岸田文雄政調会長である。岸田氏については「優柔不断」「大事な時に決断できない」というマイナスイメージが党内にはあり、先の参院選で岸田派議員が続けて落選したことも「選挙に弱い」との印象がある。

 そのような人物でも官邸は「もし二階氏を交代させるならば、岸田氏だ」(官邸関係者)というわけだ。その理由は単純で、先の関係者が語るには「岸田氏のような『軽量級幹事長』ならば官邸の思うままに操れるでしょ。そうすれば、政府と与党は官邸が牛耳ることができる」ということだった。

 二階氏は「剛腕幹事長」としての評価を得たが、それが官邸には面白くない。だから、次の幹事長は「軽量級」の操り人形でも良いということなのだろうか。ただ、「岸田幹事長」を即断できない理由が1つある。官邸サイドが気にしているのは、「もしも二階氏を交代した場合、二階氏が怒って暴れないか」ということである。

 首相自身は「連続4選」を果たすことは考えていないと見られているが、その周辺の脳裏には浮かんでいるだろう。加えて、菅官房長官らがキングメーカーとなって「ポスト安倍」を選ぶ場合にも、二階氏からの協力を得られる関係は維持しておきたいのが本音といえる。だからこそ、今回の幹事長人事は大切で、より難しい選択となっている。

 二階氏を交代させた場合の処遇については「衆院議長」「党副総裁」という声が出ているが、実質的な権限にこだわってきた二階氏からすれば、そのような「名誉」には興味がなさそうである。

 そこで、官邸は二階氏を交代するかわりに、林幹雄氏ら二階派の側近議員を「党選対委員長」などに就けて、引き続き「公認・カネ」の権限を二階氏サイドに持たせるというプランも検討しているもようだ。「実質権限」にこだわる二階氏に配慮した形を見せることで、今後も友好な関係を保っていきたいとの思惑が透けてみえる。

 二階氏の「力」がどこまであるのか。官邸がその分析を進める中で断行される今回の人事はいろいろな意味で面白く、また今後の政局に影響を与えるだろう。

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言論ドットコム編集部

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