11月18日投開票の沖縄知事選に向け、自民党県連と地元財界などで構成する候補者選考委員会は7月5日、宜野湾市の佐喜真淳市長を擁立する方針を決定した。佐喜真氏は「今しばらく時間がほしい」と返答したが、その6日後には菅義偉官房長官と会談し、前向きな姿勢を伝えた。自民党は2014年の知事選で翁長雄志知事に敗れており、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の着実な移設をにらめば、今度の知事選は「絶対に負けられない戦い」だ。前回の知事選後、県政奪還に燃える自民党系の候補が落とした沖縄県内の市長選は今年1月の南城市長選のみで勢いに乗っている。

 現職の翁長氏は4月に膵臓がんの切除手術を受け、知事選への出馬を危ぶむ声もあるが、今のところ態度は明らかにしていない。仮に翁長氏が出馬しなければ、有力な後継候補はいないとされ、翁長氏が腹心の謝花喜一郎副知事に「後は君に任せた」などと伝えたという情報もまことしやかに流れる。だが、謝花氏はそもそも「政治家タイプ」ではなく、翁長氏を支持する革新政党との関係も良好ではないといわれている。翁長氏を支持する「オール沖縄会議」は有力企業が脱落するなど分裂状態にあるとされ、革新系県議の1人は「翁長氏が出馬しなければオール沖縄は空中分解する」と話す。

 順風満帆に見える自民党だが、落とし穴はある。それが「2人の翁長」問題だ。1つ目の「翁長」問題は、現職の翁長知事が病身をおして出馬した場合、同情も加わって歯が立たなくなる可能性だ。翁長氏は議会や災害対策会議などに出席し、沖縄戦が終結した6月23日の「慰霊の日」には追悼式典にも出ている。がん治療のため剃り上げた頭髪姿で式典に臨んだ姿には、自民党県議も「鬼気迫るものを感じた」と感嘆する。こうした姿が県民の反基地感情に火をつけ、再び翁長氏に勝利をもたらす可能性は否定できない。

 もう1つの「翁長」問題は、自民党県連会長代行の翁長政俊県議が10月21日投開票の那覇市長選に出馬する意向を固めたことだ。経済界などでつくる候補者選考委員会から出馬を促されていた政俊氏は、県議5期のベテラン政治家で県内各地の選挙事情に精通している。自民党本部の幹部が「政俊さん以外に知事選を仕切れる人はいない」と評するほどだ。連戦連勝を重ねた県内の市長選で陣頭指揮を執ってきたのは他ならぬ政俊氏。そのキーパーソンが自身の選挙に専念せざるを得なくなれば、知事選へのシナリオには狂いが生じうる。

 政府・自民党はこの4年間、普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する翁長知事に翻弄されてきた。11月の知事選で再び翁長知事に敗れれば、移設が暗礁に乗り上げる可能性もある。4年ぶりの県政奪還を果たすことができるのか、それとも翁長知事側が意地を見せるのか。国内外が注目する選挙まで4カ月を切っている。

The following two tabs change content below.
言論ドットコム編集部

言論ドットコム編集部

取材・編集経験の豊富な編集部員が森羅万象に切り込んでいきます。