日本が朝鮮半島情勢に関与するにあたり、とかく人々が目を背けがちな「不都合な真実」について改めて注意を喚起しておきたい。それは、以下の7つに集約されるであろう。

1.北朝鮮が本気で非核化を実行する意思があるかどうかは甚だ疑問である。(自国民を犠牲にし、親子三代にわたり営々と築いてきた核とミサイルの抑止力と最強の外交手段を簡単に手放すはずがない。)

2.「完全かつ検証可能な非核化」は真に実現可能な目標とはいえない。(北朝鮮の閉鎖的な独裁体制の存続が前提で、核関連の秘密施設を完璧に査察し廃棄を検証することは不可能。)

3.北朝鮮の現体制の安全は誰にも保証できない。(数年後には任期が来る米国大統領に恒久的な体制保証など出来るはずがない。そのことは、核放棄の7年後に殺害されたリビアのカダフィを思い起こせば理解できよう。)

4.米国による朝鮮半島での軍事行動は現実的な選択肢ではない。(米韓軍兵士はじめ民間も含め100万人以上の死傷者が出る想定だった1994年に比し、今日の米軍は攻撃の威力も精度もはるかに増大したとはいえ、戦争は始めるのは容易でも終わらせるのは至難の業。したがって、そんな簡単には軍事行動は起こせない。)

5.「最大限の圧力」を支えてきた国連の経済制裁はすでに溶解し始めている。(すでに中朝国境の物資往来は活発化し、資源が豊富で工業基盤も確固たる北朝鮮への中露韓による投資意欲は旺盛だという。かりに国交正常化した場合には、米国企業の投資も解禁されることになる。)

6.我が国が使える「外交カード」は非常に限られている。(上記5の理由から、切り札と目されてきた日本による経済支援の価値は、相対的に低下しつつあるのではないか。)

7.米中を筆頭に「自国第一」で行動し始め、関係各国の朝鮮半島政策が無秩序に陥りつつある。

 これらの「不都合な真実」から、筆者は、今後の朝鮮半島情勢に関与する上で重要と思われる3つのポイントを導きだし、結びに日本政府に対する政策提案を行いたい。

 第1に、我々は、北朝鮮の非核化から朝鮮半島の和平に至るプロセスは、長期にわたることを覚悟すべきである。交渉は難航し、北朝鮮による挑発行為が繰り返され、核やミサイル開発が再開する可能性も否定できない。それでも粘り強く交渉を続けるべきだ。その間、大事なことは、北朝鮮がいかなる恫喝や瀬戸際外交に出たとしても、我が国の抑止力は有効だということである。これまで通り日米同盟に基づく警戒監視やミサイル防衛の着実なアップグレードを図りつつ強硬手段が手詰まりに陥った北朝鮮が施政を軟化させるのを忍耐強く待つ。その間に、北朝鮮が日米韓の協調体制に離間工作を仕掛けて来られないよう隙をつくらないことである。

 第2に重要なことは、拙速に陥らないことである。すなわち、実行可能性の低い合意を急ぐよりも、さらなる状況の悪化(たとえば、さらなる核・ミサイル実験、相互の軍事挑発、中国による影響力の拡大)を防ぐための北朝鮮に対する「国際的な管理体制」を構築し、段階的に相互不信や脅威の除去を進めていくべきである。これにより、少なくとも2つの効果が期待できる。

 1つは、前述のように各国の思惑が優先され、北朝鮮政策をめぐる利害が錯綜し無秩序に陥る可能性にしっかりタガを嵌めることができる。もう2つは、歴史的にも関係の深い中国が北朝鮮に対し過度な影響力を拡大しないよう、関係各国と連携して牽制することができるであろう。そして、この国際管理体制の構築こそ、外交カードが枯渇しがちな日本がより積極的に関与できる唯一の枠組みなのである。

 第3に、そのような国際的管理体制の枠組みの一環として、日本政府は、速やかな日朝首脳会談の実現に全力を挙げるべきである。その上で、2002年の「日朝平壌宣言」に基づいて相互信頼を確立し、不幸な過去の清算および拉致問題の解決、延いては国交正常化に向けた真摯な交渉を開始すべきである。たしかに、トランプ大統領との関係が良好で、中国とも連携しつつ米中を競わせる立場にある今が最高のポジショニングの北朝鮮にとり、日本との交渉の優先順位は低いかもしれない。だが、トランプ大統領の態度がいつ豹変するかわからない。

 その場合には、北朝鮮にとってトランプの信頼が厚い(と見られる)安倍総理は、大事なパイプ役となり得るだろう。今や中露韓による支援で十分ともいえる北朝鮮から見て、日朝平壌宣言を締結した2002年時に比べ日本の経済支援の価値が相対的に下がっていることは確かである。ただし、金正恩体制の存続を前提とすれば、皮肉なことではあるが、必然的に改革開放を強いられる海外からの投資よりも日本政府の直接援助の方がはるかに好ましいに違いない。日本はこうした点も見極めて、今後の交渉に臨むべきであろう。

 以上の前提に立って、日本として、改めて「6カ国首脳会議」の開催を提案すべきである。この提案を通じて、日本が朝鮮半島におけるすべての事柄に関与することを世界に向けて宣言するのだ。この首脳会議は、前述した「状況を管理」するための国際的な枠組みと同時に、今後最大の焦点となる非核化の「検証プロセス」を構築・監視する国際的な枠組みを構築するための合意形成をめざすものだ。

 同首脳会議を日本で開催(万国津梁の地・沖縄が最適ではないか)することも併せて提案し、議長国として拉致、核、ミサイルの包括的解決(および、北朝鮮の再建から朝鮮半島の平和、北東アジアの安定)に向けた「実務協議」の枠組み創設を主導すべきである。このことを通じて初めて、日本外交の戦略目的が、決して自国の拉致問題を解決するというだけではなく、朝鮮半島の平和から東アジア全体の安定と繁栄であることを内外に示すことができるであろう。

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衆議院議員 長島昭久
1962年2月17日生まれ。慶應大法学部卒、慶應大大学院法学研究科修士課程修了(憲法学)、米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)修士課程修了。2003年11月の衆議院選挙で初当選。現在6期目。元防衛副大臣。日本スケート連盟副会長