「歴史的」と喧伝されたシンガポールでの米朝首脳会談から早1カ月。首脳会談の翌週には実務者協議が始まる、と述べたポンペオ米国務長官もさすがに痺れを切らして、訪朝。結果は、北朝鮮外交伝統のお家芸である「遷延戦術」の頑健さを改めて痛感させられたのではないか。

 たしかに、昨年の今頃は一触即発の戦争前夜だった(ように見えた)ものが、今年に入ってガラリと状況が一変した。北朝鮮の平和攻勢に韓国文在寅政権が飛びつき、トランプ大統領がこれに乗って世界をあっと驚かせ、あれよ、あれよという間に「緊張緩和」が進展したのだ。その間に、抜け目ない金正恩朝鮮労働党委員長は3度も訪中し、叔父の張成沢処刑以来暗転していた中国との関係を見事に修復して見せた。

 あまりの展開の速さに、長年朝鮮半島問題に関わってきた専門家でさえついて行けないような有様だ。その中で、昨年以来一貫して「最大限の圧力」路線を主導してきた我が国は「蚊帳の外」に置かれているともっぱらの評判だ。

 それについては、大きく2つに意見が分かれよう。
 1つは、蚊帳の外で何が悪いのかというもの。①そもそも我が国に北朝鮮との国交正常化を積極的に進めるメリットはほとんどないし、②圧力路線を主導してきた以上、対話路線への転換が他国より遅れるのは当然織り込み済みだし、③たとえ出遅れたとしても、日本には経済支援という切り札があるのだから慌てる必要はないというのがその根拠だ。

 他方、この緊張緩和のバスに乗り遅れてはならないという意見も根強くある。①トランプ政権のお先棒を担いで圧力路線を推進してきたため、北朝鮮の批判を一身に浴びることになり、②挙句にトランプ大統領にはしごを外され、拉致問題解決の糸口すらつかめず、③結果として、朝鮮半島に対する中国の影響力拡大を許してしまった安倍外交は完全に失敗したと。

 筆者は、どちらかというと、慌てる必要はないという前者の意見に近いが、後者が指摘する3つの懸念は、日本の外交努力で必ず払拭しなければならない。具体的には、①君子は豹変す。圧力から対話へのモードチェンジを躊躇するべきではない。②すみやかみ日朝首脳会談に漕ぎ着け、拉致問題を含む「過去の清算と懸案の解決」(日朝平壌宣言)に向けた交渉に入るべきである。③朝鮮半島に対する中国の影響力が過度に拡大しないよう、日本は経済支援を中心に南北交流から北朝鮮の再建に向け積極的に関与すべきである。

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衆議院議員 長島昭久
1962年2月17日生まれ。慶應大法学部卒、慶應大大学院法学研究科修士課程修了(憲法学)、米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)修士課程修了。2003年11月の衆議院選挙で初当選。現在6期目。元防衛副大臣。日本スケート連盟副会長