突然、心当たりのない請求書や督促状が家に届いて驚かれた人はいるだろう。PCやスマホで気づかないうちにサイト内の課金を受け入れてしまったのだろうか、親や子供が利用してしまったかもしれない―。こんな不安にかられて、記載されている連絡先に電話したり、先方の要求通りに支払ったりする人も少なくない。だが、こうしたケースのほとんどは架空請求だ。公的機関を名乗り、期限を区切っていることから我を忘れて焦ってしまう心理はわかるが、こうした詐欺の手口に引っかからないためには、事前に対応策を家族内で共有しておく必要がある。

 消費者庁は7月22日、西日本を中心とした豪雨災害の被災地で、点検商法や便乗商法など災害に関連した消費者トラブルが発生する傾向があるとして、注意を促す「緊急のお知らせ」を発表した。山口県や岡山県など11府県から400件以上(6-20日)もハガキによる架空請求に関する相談が寄せられているという。

 全国の消費生活センターなどに寄せられた架空請求に関する相談は年々増加しており、2017年度は約20万件に上る。最近の手口の特徴は、ハガキで「契約不履行による民事訴訟が起こされた。連絡がない場合は、裁判所の許可を受け、給与等の差し押さえを強制的に実施する」「未納料金がある。本日中に連絡がない場合は法的手続きをとる」などと要求するものだ。「法務省管轄支局日本民事訴訟管理センター」など公的機関を名乗るケースや、実在する大手事業者の名称がかたられるケースもある。

 ハガキを受け取った人は、住所と名前が特定されていることに不安を覚え、さらに法的措置がとられかねない恐怖から記載されている連絡先にコンタクトをとってしまう恐れがある。だが、くれぐれも焦りは禁物だ。消費者庁によると、架空請求は消費者の情報を完全に特定して送っているわけではない。連絡先にコンタクトをとってしまうと、そこで個人情報がさらに知られてしまい、金銭を要求されるという悪循環に陥ってしまう。

 7月半ば、東京都内に住む一人暮らしの男性(75歳)の自宅に一通のハガキが届いた。「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」と記載され、利用していた契約会社もしくは運営会社側から契約不履行による民事訴訟が提起された、と書かれている。連絡がなければ「預金や有価証券、不動産などの差し押さえを強制的に執行する」などと煽り、「最終期日」として数日後の日付が記載されている。

 男性は「架空請求だろう」とは思ったが、ハガキの下の方に目を移すと「法務省管轄支局 国民訴訟お客様管理センター」とあったことから、「もし、本当だったらどうしよう」と焦るようになった。慌てた男性は近くに住む息子にハガキを見せに行き、インターネットで検索したことで架空請求であることが判明したが、「息子と連絡がつかず、自分一人だけで判断していたら危なかったかもしれない」と振り返る。後に近所でも同様の架空請求が相次いでいることが分かった。

 ハガキによる架空請求の相談は、2016年度と比べ50倍近くに増えている(2017年度は約10万件)。消費者庁は「未納料金を請求されても心当たりがなければ、決して相手にしないように」として、不審なハガキが届いた場合には「消費者ホットライン」(局番なしの188)に相談するよう注意を呼び掛けている。

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