北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉が一進一退を繰り返す中で、米朝双方に重要な2つの日付が注目されている。その2つとは「9月9日」と「11月6日」だ。9月9日は北朝鮮の70回目の建国記念日で、北朝鮮とすれば、この日までに「金正恩体制」の正統性を強化する成果を得たい。具体的には、6月12日の米朝首脳会談で合意した朝鮮戦争の「終結宣言」だ。もう1つの11月6日は米中間選の投開票日にあたる。トランプ米大統領が2020年の大統領選で再選を果たすためには、共和党の勝利が不可欠で、北朝鮮の非核化をトランプ外交の「成果」として選挙戦に利用したい思惑も見える。

 緊張緩和をアピールしたい米朝の短期的利害はほぼ一致している。北朝鮮は寧辺核施設の稼働を続けており、ポンペオ米国務長官が7月6~7日に訪朝した際は一方的な非核化を求める米政府を「強盗」とまで罵った。しかし、これは表面上のことで、日本外務省幹部は「9月9日と11月6日をにらんで双方が駆け引きをしているに過ぎない」と冷静に見ている。

 日本政府が懸念するのは、米朝交渉の「早期妥結」だ。北朝鮮にとって、9月9日までに成果を出すことは至上命題。仮に満足できる合意に達しなくても「成果」として国内的に宣伝すると見込まれる。早期に「終戦宣言」に合意すれば、法的拘束力のある「平和協定」、在韓米軍の縮小・撤退などと要求がエスカレートしかねない。

 日本政府が早期の米朝交渉進展に懸念を示す背景には、米政府が日本の安全保障に不利な条件で北朝鮮に歩み寄る懸念を払拭できないからだ。北朝鮮は7月上旬に北西部東倉里の「西海衛星発射場」の解体作業に着手した。これは米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術開発に重要な役割を果たす施設であるが、日本を射程に収める中短距離ミサイルの解体は手つかずのままとなっている。

 トランプ氏は、西海衛星発射場の解体が確認された後の7月23日、自身のツイッターで北朝鮮の非核化について「私が怒っているとフェークニュースが伝えているが、間違いだ。とても満足している」と発信した。北朝鮮は7月27日には朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨約55柱を返還するなど、矢継ぎ早に「行動」を示している。現時点では非核化完了まで制裁を継続するというのが米政府の公式な立場だが、米中間選をにらんで米政府の踏み込んだ「行動」が必要と判断する可能性もある。日本政府高官は「表に見える交渉に一喜一憂していては駄目だ。米朝交渉が膠着すればするほど歓迎すべき事態だ」と語っている。

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言論ドットコム編集部

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