沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場を名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸に移設する計画をめぐり、国と県の対立が新たな段階に入った。翁長雄志知事が7月27日、辺野古沿岸部の埋め立て承認を「撤回」する手続きに入ると宣言したからだ。県は撤回する根拠として、埋め立て区域の地盤が軟弱で安全を確保できないにも関わらず防衛省が工事を強行していること、県との事前協議に応じていなかったこと、などを挙げる。しかし、翁長氏が27日の記者会見で最も力を入れたのは、北東アジアの国際情勢だった。

 「米国のトランプ(大統領)と金正恩(北朝鮮の朝鮮労働党委員長)が握手をして抱き合うぐらいの気持ちで緊張緩和をしている」。翁長氏はこう述べ、「20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に押し進めようとする政府の姿勢は、到底容認できるものではない」と政府を批判した。

 米軍にとって、沖縄の米軍基地が果たす最も重要な役割の1つは、朝鮮半島有事の際に在韓米国人を退避させる拠点としての役割だ。こうした観点から見れば、米朝間の緊張緩和が進めば進むほど沖縄の米軍基地は不必要となる。

 軍事力の必要性は安全保障環境の変化によって変わるものであり、20年も経てばその意義も変わる。その意味で翁長氏の発言は正しい。ただ、20年の変化が米軍基地の必要性を低減させているとは言い難い。
 
 北朝鮮は核兵器、ミサイル開発を断念したわけではないし、中国の軍拡は20年前から一貫して続いている。抑止力の重要性が大きく減じているとは言えないのが現状だ。ただ、この20年間で最も大きく変化したのは米軍の戦略だ。

 米国防総省は中国の弾道・巡航ミサイル開発の進展に伴い、在日米軍基地はおろか、米領グアムの基地ですら脆弱性が増したと判断している。この脆弱性を克服するため採用したのがローテーション展開で、米海兵隊を日本、オーストラリア、フィリピン、グアム、ハワイなどに巡回させることで敵からの攻撃の焦点を分散させる戦略だ。加えて、トランプ米大統領は大統領選期間中に在日米軍や在韓米軍の撤退や縮小を主張しており、6月の米朝首脳会談後も在韓米軍の将来的な撤退を示唆した。

 防衛省幹部は「現在の在日米軍基地は、トリップワイヤー(仕掛けわな)のようなものだ」と嘆息する。同盟国を見捨てかねない米軍も、第一撃で犠牲者が出れば反撃せざるを得なくなる。いわば人質のような形で米軍を自国内に置くことで同盟国は安心できることになる。翁長氏は、自身が強調した20年間の変化が、在日米軍基地の必要性を強化していることに気づいていないようだ。

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