1.米国経済は絶好調
 米国景気は現時点、絶好調である。FRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和と移民の流入で人口が増加している上に、最後に大規模恒久減税が後押しして景気を押し上げたからであった。前の2つはオバマ政権時代の政策で、最後の減税だけがトランプ大統領の政策である。

 経済政策が成功かどうかは、5年後にわかることになる。即効性があるのは、トランプ大統領が実行した大幅な減税程度である。しかし、トランプ大統領は、すべて自分の政策が景気を押し上げたというが、半分以上はオバマ政権の政策が良かったからだ。

 そして今、トランプ大統領が行っている政策は、移民流入を止め、貿易戦争で中国からの輸入を止め、FRBは量的緩和から利上げと資産縮小で、インフレを抑える必要になっている。

 このすべてが景気を下げる政策になっている。5年後、景気は確実に下り坂になることは見えている。5年より前に景気は落ちるはずで、すでに中国では景気が大幅に落ちているから、世界景気は、新興国から崩れてきている。

2.日本経済は停滞

 日本のGDP(国内総生産)は、5月にマイナス4%を記録している。米国と同様な量的緩和を行ったが、米国のような景気上昇とはなっていない。この原因は、人口減少と労働人口の減少である。GDPの6割が消費経済であるので、人口減少になると消費が落ちるし、特に労働人口が落ちると、年金より給与の方が高いので、消費は年金生活になると落ちることになり、このため、2重の意味で消費が落ち、デフレが続行したのである。

 この結果は5年前の政策が失敗であったことになる。結局、量的緩和だけでインフレになるという仮定が誤りであることになる。人口減少、少子高齢化が原因であるから、それの解決が必要であったのに、それに真剣に取り組まなかったことが今になっても、景気が回復せず、2%インフレにもならず、量的緩和政策の限界に来てしまったのである。

 米国のように人口増加がある中での量的緩和をしないと効果がないことが明確化した。リフレ派の欧米経済学者は自分の学説の誤りを修正している。しかし、日本のリフレ学者は、誤りを認めていないことが問題なのである。日米の差は、移民政策で人口増加があるかないかの違いである。

3.移民政策

 欧米の失敗した移民政策を議論して、より問題が少ない移民対応の仕組みを構築するべきであったが、それをしないで移民政策に反対する人たちの意見を聞いたことが失敗の原因である。

 今、人手不足が深刻化して、泥縄的に移民政策をしようとしているが、これは欧州と同様な移民政策の失敗を起こしてしまうことになる。十分な仕組みの構築をしてから海外労働者を受け入れるべきであり、そのために、少数移民を入れてみて試行錯誤を繰り返して、より問題の少ない仕組みにするべきである。

4.量的緩和の限界

 日銀の量的緩和は、国債買い入れと株式の買い入れ、リートの買い入れであるが、国債の発行量の約半分を日銀が買って、流動性のある国債のほとんどすべてを買ってしまった。このため、国債市場が成り立たなくなり、新規国債の売却にも支障が出てしまっている。

 新規国債の発行量は30兆円であり、80兆円も年間で買えない。このため、買取量を柔軟化した。それと、長期金利が0.1%程度で、銀行の収益力がなく倒産の可能性が出てきた。このため、10年国債の金利水準を0.2%に引き上げた。

 しかし、新規国債をすべて買うということは、財政ファイナンスになり、日本の経常収支が赤字になったら、超円安になることが明確化する。その前に海外ヘッジファンドは、空売りを仕掛けることになる。円の信頼性が失われることになり、非常に危ないことになる。もちろん、超円安になると、猛烈なインフレになる。特に石油高騰は諸物価を一気に上げてしまう。

 もう1つが、日経平均のETF買い、TOPIXのETF買いであるが、東証株価の歪が大きくなっている。日経平均の寄与度が大きい企業株の筆頭株主が日銀となり、株価も高くなっている。海外証券会社は、日銀の買いがなかったら、日経平均は2万円弱から1万8千円程度の株価であると試算している。

 もし、日銀が株を売却したら、日経平均は8千円台まで下がると試算。このため、日銀は株の売却ができないのはもちろん、買いもそろそろ限界に来ている。

 というように、今の量的緩和政策を見ると、太平洋戦争に例えると、ミッドウェイ海戦の時期に来てしまっている。ここで政策を変更しないと、ガダルカナル、インパールになり、そして終戦で、ハイパーインフレかもしれない。

 ということで、今回の日銀金融政策変更は、日本経済のターニングポイントのように感じる。さあ、どうなりますか?

The following two tabs change content below.
日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

1975年、東工大制御工学科卒。日本電信電話公社に入社し、つくば博覧会協会で街づくりを経験。通信研究所で人工知能など最先端のコンピューター技術の開発、IBMで米国企業文化に触れる。NTTデータで省エネ技術や米国、中国、インドなどでソフト開発を行い、カントリーリスクから国際問題を研究した。その後同研究所主宰。 1999年から「国際戦略コラム」を主催。国際関係や日本文化を論理的な視点で冷静に評論中。有料メルマガは、まぐまぐ大賞の経済政治分野で2位。
日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

最新記事 by 日本国際戦略問題研究所長 津田慶治 (全て見る)