すい臓ガンで闘病中だった沖縄県の翁長雄志知事(67)が8月8日、同県浦添市内の病院で死去した。4年前の知事選で保革を超えた「オール沖縄」の象徴として当選し、政府が進める米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対を貫いた翁長氏。国との全面対決にも憶することなく、最期まで闘志をむき出しに移設阻止を目指した姿には県民だけでなく、全国から評価する声もあがった。11月には再選を目指す知事選が予定されていたが、翁長氏の死去に伴い次期知事選は9月に行われる。沖縄県政はどうなるのか、辺野古移設問題への影響は…。現地に飛んだ言論ドットコム編集部は、衝撃が走る沖縄県の地元メディアに注目した。


 ■政府「辺野古は唯一の解決策」

 辺野古移設阻止を掲げてきた翁長氏は7月下旬、仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の撤回を表明したばかりだった。すい臓ガンの公表後、厳しい闘病生活を強いられてきたが、「承認撤回」は翁長氏が譲れない一線で最期の抵抗ともいえた。沖縄県は翁長氏の遺志を踏まえ、8月9日に防衛省沖縄防衛局から弁明を聞くための聴聞を行った。

 だが、国との激しい対立に勝機は見いだせていない。菅義偉官房長官は8月9日の記者会見で「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟の抑止力維持や普天間飛行場の危険性除去を考えた時に、唯一の解決策であるという考えに変わりはない」と述べ、引き続き移設を推進する考えを表明した。

 ニュース速報で翁長氏死去を知った名護市内の女性会社員(32)は「翁長氏は信念の人で名護市民、沖縄県民の思いを代弁してくれていた。次の知事は翁長県政を継承できる人が良い」と語った。

 ■地元メディアは大々的に報じる

 沖縄のメディアはどう報じたのか。「沖縄タイムス」と「琉球新報」の地元2紙は8月9日付朝刊一面を翁長知事死去に関する記事で埋めた。中面も、翁長氏の歩みや語録、国会議員や識者のコメントなどの関連記事であふれた。
 
 地元のテレビ番組も8月9日夕方から1時間の報道特別番組を放送し、追悼した。琉球朝日放送は「緊急報道特別番組 翁長知事逝く」を放送し、2014年11月の知事選で翁長氏が当選するまでの道のりを振り返った。初当選した翁長氏が「日本の安全保障は、日本国全体で考えてほしい」と語った部分を紹介した後、菅官房長官が「(辺野古移設は)粛々と進めていく」と記者会見で述べた模様を報じ、ナレーションで「かき消される沖縄の声」とつなげた。

 さらに菅官房長官との面会時に翁長知事が「上から目線の粛々という言葉を使えば使うほど県民の心は離れる」と批判したシーンを取り上げ、この4年間は「茨の道だった」と続けた。番組では稲嶺恵一元沖縄知事が「(翁長氏は)沖縄の保守は日本全体の保守とは違うんだ、と。『私はピエロになるかもしれない』と。相当な覚悟をもって進んだと思う」とコメントした。

 また、沖縄テレビは同時刻に「命燃え尽きるまで 追悼 翁長雄志知事」を放送。保革を超えた「オール沖縄」の枠組みで、翁長氏が「イデオロギーよりアイデンティティー」を掲げて当選した知事選の模様を振り返った。「基地は沖縄経済の最大の阻害要因である」とした翁長氏は4年前の知事選で、現職だった仲井真氏を約10万票の大差で破った。番組内では「オール沖縄」を具体化した人物とし、「戦う知事を全国に印象付けた」と紹介した。

 ■次期知事選は9月投開票

 翁長氏死去を受けて、次期知事選は9月中に実施される。公職選挙法に基づき、最も遅い場合でも9月30日に行われる見通しだ。自民党は、佐喜真淳宜野湾市長を擁立する予定で着々と準備を進めている。一方、翁長氏を支えてきた県政与党は翁長氏再選を目指してきただけに動揺も走っている。

 翁長氏の遺志を継ぐ候補者として、謝花喜一郎副知事の名が上がるが、保守票の一部も取り込んだ翁長氏と比べると「オール沖縄」の受け皿になりえるのか不安視する声もあがる。この他、沖縄選出の糸数慶子参院議員を推す声もあるものの、一本化に向けた調整は難航する可能性もある。

 現職知事の急逝により、一気に慌ただしくなった沖縄県政。4年前に実現した「オール沖縄」は羅針盤を失い崩壊するのか、それとも逆にまとまるのか。知事選最大の争点になる普天間移設問題は、どちらに向かうのか。県政史上例のない戦いがまもなく幕を開ける。

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言論ドットコム編集部

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