沖縄県の翁長雄志知事死去に伴う知事選は9月30日に投開票される。保革を超える「オール沖縄」の象徴だった翁長氏の急逝により、その支持勢力の後継者選考は難しいとみられるが、危機感を募らせているのは着々と準備してきたはずの保守陣営だ。自民党は8月14日に立候補を正式表明した同県宜野湾市長、佐喜真淳氏の支援に全力をあげるが、対峙するのは「今は亡き翁長氏」。沖縄県内では8月8日の死去後、翁長氏に関する特別報道が相次ぎ追悼ムード一色となっている。知事選最大の争点は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題であるというのが政界の見方だが、沖縄県民の関心は「翁長氏の遺志を引き継ぐのか、否か」にもある。

 「国と争いが絶えず、分断が生まれた」。当初は11月に予定されていた次期知事選に向けて準備してきた佐喜真氏は8月14日の記者会見で、翁長県政を意識した発言を繰り返した。4年前の知事選で、翁長氏は「オール沖縄」を背景に現職知事に約10万票という大差をつけて当選したが、辺野古移設問題をめぐり国と激しく対立。移設を推進する政府と、移設阻止を掲げた翁長氏の対立構図を選挙戦の争点にしたい思惑が見える。

 だが、こうした戦略を疑問視する沖縄県民は少なくない。那覇市の男性会社員(44)は「最期まで沖縄のために闘ってくれた翁長知事に感謝している県民は多い。死ぬ直前まで県民のために働いてくれた翁長氏を批判すればするほど、同情票は生まれてくるだろう」と語る。

 翁長氏は国との「法廷闘争」でも一歩も引かず、死去直前の7月下旬に仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の撤回を表明した。本来ならば、こうした県政のあり方が問われる知事選になったはずだが、今回は「翁長氏の命を賭けた行動をどれくらい評価するか」(県政与党関係者)に注目が集まっており、「政策」よりも「人物評価」に重きが置かれつつある。沖縄の地元メディアでは翁長氏急逝に関する報道が相次いでおり、その「追悼ムード」はしばらく続きそうだ。

 こうした風向きの変化に敏感に反応した県政与党などは8月14日、翁長氏の遺志を継ぐ候補者を今月30日までに選考することを確認。翁長氏の再選を目指してきただけに準備の遅れは否めないものの、市町村支部の立ち上げや政策づくりを急いで4年前の「再現」を狙う。

 ある自民党中堅議員は「知事選は保守系候補が圧勝できるという読みが春先まであったが、翁長氏急逝で雰囲気はずいぶん変わってきた。佐喜真氏の対抗馬は誰になるのか分からないが、相手は『亡き翁長氏』であり、その強さは『翁長氏以上』かもしれない。正直、これ以上戦いづらい選挙はない」と漏らしている。

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