あまりにも長い黒田東彦日銀総裁による大胆な量的緩和は、日本の経済を脆弱化させてしまった。経済的なショックや戦争などが起きた時の対処が難しくなっている。しかし、その検討をする必要になってきた。

1.中東戦争が始まるか

 イランやトルコと米国との関係がおかしくなっている。中東地域は米国の撤退とロシアの進出で、力の均衡が崩れている。特に今まで米国の陣営にいたイスラエルとサウジアラビアは、ロシアとの関係を友好的にして、しかし、イランとの関係は悪化している。

 トルコもロシアの戦闘機を撃墜したが、その後、ロシアとの関係を良好にしている。トルコは、米軍がいるクルド地域を攻撃するのではないと心配されていた。しかし、米国とトルコは友好国であり、そのようなことはしないと思われていた。

 という状況下で、トランプ大統領は支持層である「キリスト教福音派」のブランソン牧師を解放しないトルコに経済制裁をして、トルコリラ暴落を引き起こした。

 また、米国はイランに対しても核合意を一方的に破棄して、イラン原油輸出ができないように、イランと取引のある世界の企業をドル決済システムから追い出すとしている。対して、イランはそのような一方的な米国の仕打ちに、ホルムズ海峡を封鎖するという。

 米国キリスト教福音派は、聖書に書いてあることはすべて正しいという教義であり、「ヨハネの黙示録」などに書いてあることも実行したいと願っている。そして、福音派信徒だけが救われて天国に行けると信じている。

 その黙示録に書かれている状態に中東を取り巻く状態が近いことになってきた。トランプ大統領が友好国トルコに制裁を掛けるのは、この実現を福音派が望んでいるからのようにも感じる。

 米国とイスラエル、サウジ、クルド人勢力対ロシア、中国、シリア、トルコ、イラン、ヒズボラなどである。そして「ハルマゲドン」となる。

 もし、イランがホルムズ海峡を封鎖したら、日本も米国側での参戦を要請される。日本のエネルギーの75%以上はホルムズ海峡を通って運んでいる。米国は自国のシェールで自給できる。海峡封鎖でも困らない。米軍は日本のために戦うのに、日本が何もしないのは、許さざる状況になる。

 しかし、恐らく核戦争になり中東は大きく破壊されると見るが、その時、日本はどうなるかを検討したい。

2.超円安から「ハイインフレ」へ

 中東戦争が始まったら、石油の値段が上がり、1バーレル100ドル以上になる。日本の貿易収支は赤字になり、中東戦争時には訪日外国人も少なくなりインバウンド収入もなく、経常収支も大幅な赤字になる。

 その上に、日本も米国の要請で中東戦争に参加することになり、戦費調達のために国債発行量も増えることになる。そのすべてを日銀が買うことで、財政ファイナンスとなり円の信頼性を棄損して、超円安となる。

 超円安で原油価格が1リットル300円以上に猛烈に上がり、諸物価もそれに釣られて上がり、とんでもないコストアップインフレになる。ここまでなら、物価インフレは行っても3倍程度で済む。

3.防御策

 しかし、日銀当座預金の資金が市中に出ると大変なことになる。だが、インフレになると、銀行から1%金利で借りた方が得になる。このため、企業や資産家は、大挙して銀行から資金を借りる。

 市中銀行の資金が日銀当座預金にあれば、市中の円通貨量はあまり上がらないが、それがどんどん出ていくと、4倍から10倍以上の「ハイインフレ」になる。

 これを阻止するためには、日銀当座預金を封鎖して、当座預金をマイナスやゼロ金利から5%以上に金利を上げて、かつ預金準備率を大幅に上げて、市中の円通貨量をコントロールする必要になる。

 日銀が金利を大幅に上げると、超円安も止まる。金利上昇は、国債の利払いを増やすが、初期インフレに緊急的な対処をしないと、ハイインフレやハイパーインフレになってしまう。日銀が迅速な対応を取るかどうかがハイパーインフレとインフレの岐路になる。

4.その後

 そして、国民は確実に貧困化して、今までに蓄積した個人の金融資産は最大10分の1になるが、累積国債の借金はその時10分の1に棒引きになっている。国民はこの事態を招いた自民党に批判的になるはず。

 どちらにして、国内での食料、エネルギー自給を重視して政府は、この事態を想定して準備するべきだ。上手くいけば、3倍程度のインフレで済む。しかし、対処を失敗すると10倍以上のハイパーインフレになってしまう。

 ということで、もし、中東戦争が起きてホルムズ海峡が封鎖されると、日銀の5年以上にわたる黒田総裁の大胆な金融量的緩和政策で、日本は第2の敗戦を迎えるが、この敗戦処理も重要になってくるようだ。

 さあ、どうなりますか?

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日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

日本国際戦略問題研究所長 津田慶治

1975年、東工大制御工学科卒。日本電信電話公社に入社し、つくば博覧会協会で街づくりを経験。通信研究所で人工知能など最先端のコンピューター技術の開発、IBMで米国企業文化に触れる。NTTデータで省エネ技術や米国、中国、インドなどでソフト開発を行い、カントリーリスクから国際問題を研究した。その後同研究所主宰。 1999年から「国際戦略コラム」を主催。国際関係や日本文化を論理的な視点で冷静に評論中。有料メルマガは、まぐまぐ大賞の経済政治分野で2位。
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