日銀は7月末に開いた金融政策決定会合で、2013年4月から続く大規模な金融緩和策を一部修正することを決めた。長期金利について、これまでの水準の2倍となる0・2%程度まで上昇することを容認。マイナス金利の適用範囲を縮小し、株価を下支えするため購入している上場投資信託(ETF)の配分を見直すことも決めた。今後、金融緩和を手じまう「出口」に向かうのか、市場でも見方が分かれている。

 金融緩和策の修正は、2016年9月以来、1年10カ月ぶりとなる。金融緩和策による低金利で金融機関の収益が落ちるなど「累積的」にたまってきた副作用に配慮したものだ。具体的には、これまで0・1%程度までの上昇を認めていた長期金利に関し、「経済・物価情勢に応じて上下にある程度変動しうる」(会合後の声明文)ようにする。黒田東彦総裁は記者会見で、2倍程度の水準までの上昇を認めるとした。

 また、金融機関が持つ日銀の当座預金について、マイナス金利を適用する部分を、現在の約10兆円の水準から約5兆円へ引き下げる。ETFは、銘柄数が少ない日経平均株価(225種)連動型の比率を減らし、より幅広い銘柄に投資できる東証株価指数(TOPIX)連動型の比率を増やした。株価が触れやすい銘柄があるとの批判に応えたものだ。

 もっとも日銀は、長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0・1%とする金融緩和の大枠は維持するとしている。黒田総裁は「金利の引き上げは考えていない」とはっきり述べた。

 政策修正の決定にあたっては意見が分かれたもようだ。日銀が8月8日に公表した今回の決定会合の「主な意見」によると、委員から「実質金利が上昇し、物価の伸び悩みを助長しかねない」といった反対意見が出たという。発言者の氏名は公表されていないが、金融緩和を通じた経済成長を重視する「リフレ派」の委員が反対した可能性がある。日銀としても、いかに難しい判断だったかを示したといえる。

 日銀が金融政策の修正に踏み切ったのは、デフレ脱却を見通せず、金融緩和の長期化が避けられない中、利ざやの縮小で苦しむ銀行などの〝救済〟に走らざるをえない、と判断したからだ。

 日銀は今年4月、2019年度ごろを目指していた「物価上昇率2%」の目標達成時期を「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」から削除。期限を設けず、じっくり物価上昇に取り組む姿勢を示した。

 だが、低金利の長期化は、少子化という構造的問題とあいまって、金融機関の収益をむしばんでいる。とくに、地方銀行などは再編の加速が避けられない情勢で、日銀としても動かざるをえなかったとみられる。ただ、今後の日銀の真意は、市場関係者もつかみかねている。エコノミストらの間でも、「実質的な出口政策の始まりだ」「いや、あくまで金融緩和の継続で、その範囲内での微修正だ」と、見方が分かれている。

 政策の修正後、市場では日銀の意図を試すため国債を売る動きが加速し、8月2日には長期金利が一時、0・145%と、1年半ぶりの高水準をつけた。だが日銀は同日、予定外だった4000億円分の国債買い入れを実施。市場では「実際には0・2%までの上昇は容認していない」との意見が上がった。それでも、「徐々に金利上昇を認めていくのではないか」との見方は消えていない。

 確実にいえるのは、来年に参院選や消費税率の10%への引き上げを控え、安倍晋三政権が、景気を冷やす方向となる「出口戦略」をおおっぴらには認めることはありえないということだ。政権幹部も「緩和の持続性が強化された」(麻生太郎財務相)と釘を刺している。日銀の狙いのとらえ方をめぐり、しばらく思惑の交錯が続きそうだ。

The following two tabs change content below.
言論ドットコム編集部

言論ドットコム編集部

取材・編集経験の豊富な編集部員が森羅万象に切り込んでいきます。