今や小学生が将来なりたい職業の上位に「ユーチューバー」が入る時代になった。日本FP協会の調査(2017年度)によれば、男子小学生がなりたい職業の6位は「ユーチューバー」で、前回の14位から一気にトップテン入り。その浸透ぶりに驚く人も多いのではないか。

 日本で「youtube」(ユーチューブ)に代表される動画共有サイトが急速に普及しはじめたのは2007年頃だろう。パソコンやスマートフォンなどでいつでも、どこでも、容易に楽しめるとあり、その衝撃はとてつもなく大きなものとなった。これが契機となって「アナログ」から転換した人々は少なくない。自分たちで簡単に投稿し、それを共有でき、見ず知らずの人の面白い動画を見て楽しむ。その影響力は、マーケットが全世界であることを考えると「別次元」といえる。

 もちろん、それはビジネスでも大きな転換をもたらせた。例えば、企業が多額の予算を組んでいたTVコマーシャル。高額な動画広告枠をおさえる必要もなく、沢山の人にリーチできる時代へと変わったのだ。この頃から日本の動画広告市場は活性化し、サイバーエージェントとデジタルインファクトが共同で実施した調査によると、2017年の動画広告市場は1093億円。2020年には2000億円を突破する勢いで成長し、今後もこの傾向が続くと予想されている。もはや、企業PRには切り離せない存在だろう。

 私が、動画広告枠で活用される動画コンテンツの制作を担うにあたり、もっとも大切にしている点に触れておきたい。一言でいうならば、それは「最終イメージの共有」だ。撮影を要さないCG映像制作という分野に関しては、形のないモノを視覚認知できるように制作していく。制作チームはもちろん、代理店、クライアントまで一貫したイメージの共有が欠かせないためだ。

 最近は、映像メディアを目にしない日がないくらい街のいたるところにディスプレイが配置されている。駅にはサイネージ広告があらゆる場所にあり、電車に乗ればトレインチャンネルが流れている。手元のスマートフォンには映像、デジタル時計の中にも映像という時代である。だからこそ、その小さなイメージの違いがCG映像制作では大きな時間のロスになり、全体のクオリティを左右する致命的なミスに繋がる。

 例えば、企画書に「SF映画に出てくるような近未来の部屋」という文字があった場合を考えてみたい。そこでは、人気映画の「スターウォーズ」に出てくるような宇宙船の中の部屋を想像する人がいれば、「マイノリティリポート」のように空中に映像が映し出されて、それを手のアクションで操作できるような部屋を想像する人もいる。「マトリックス」シリーズのようなデジタル空間を想像する人もいるかもしれない。これらは、すべて「SF映画に出てくるような近未来の部屋」であって間違ってはいないが、つくり上げていく上では全く別のモノになってしまう。

 アートワークにせよ、広告映像にせよ、最終的な「イメージの共有」は、もっとも基本的なことでありながら、もっとも見落としてしまいがちな問題だ。私は、このような点を大切にした小さな積み重ね、いわば各セクションのプロフェッショナルな仕事が「勝負の別れ道」であると考えて仕事をしている。

 商品の購買力をかき立てたり、認知拡大に繋がったりするような「作品」には、こうした意識は欠かせないものだろう。

 かつては動画制作に要する予算は莫大なものだった。だが、今は機材も進化し、容易に制作することが可能になっている。最近では、動画サイトに個人で制作した映像を投稿するアマチュアクリエイターも急増している。そういう中から、人気ユーチューバーのように「売れっ子映像クリエイター」と呼ばれる人が出てくるかもしれない。

 いまや企業は商品を動画広告でPRするのが当たり前の時代になっている。先に触れた調査結果を見るまでもなく、その需要は極めて旺盛だ。こうした時代の流れを背景に、近い将来、小学生がなりたい職業の上位には「映像クリエイター」が入るかもしれない。その時は、クリエイターが何を大切にして仕事をしているのか、という点を見てもらえればと思う。

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GORAKU 川田昇吾
1982年生まれ。CGプロダクション勤務を経て2010年に独立し、2014年3月に株式会社「GORAKU」を設立。CM、MV、展示映像などのCG制作やディレクションを行う。 視覚コミュニケーションのプロフェッショナルとして、企画や演出、デザインに加え、「無駄のないワークフロー」を提案。CGを軸としたMV、CM、VPのディレクション、LIVEビジョンやプロジェクションマッピングといった大型映像の監修、企画にあわせたチームをオーガナイズし、「突き詰めた映像表現」には定評がある。