トランプ米政権は8月7日、イランとの核合意からの離脱に伴い、対イラン制裁の一部を再発動した。イランとの自動車や鉄鋼、貴金属などの取引を禁止するもので、日本といった第三国の企業もイランとの取引を続ければ、巨額の罰金を科すという。11月にはイランの〝基幹産業〟である石油部門の取引や金融取引も対象とする。今後、イラン産原油の供給が減り、原油相場の上昇につながれば、日本のガソリン価格が跳ね上がる可能性も否定できない。緩やかながらも続く景気回復に水を差されることになりかねず、注視が必要だ。

 「日本の経済に及ぼす影響について、これまで以上に注意深く分析する」(菅義偉官房長官)、「日本企業の活動に悪影響が出ないよう引き続き米国と粘り強く協議する」(世耕弘成経済産業相)。制裁の再発動後、日本政府の幹部からは、悪影響に対する懸念の声が相次いでいる。トランプ大統領は8月7日、再発動にあわせツイッターに「史上最も強力な制裁だ」「イランとビジネスを行う者は、だれであろうと米国ともビジネスできない」と投稿した。

 核開発制限の受け入れを条件に、米英仏独中露の6カ国がイランに対する経済制裁の解除で合意したのは、2015年7月のことだ。しかし、トランプ大統領は、核開発計画の制限が期限付きであることや、弾道ミサイルの開発が制限されていないことを理由に今年5月、合意離脱と制裁の再発動を表明。8月6日、再発動に関する大統領令に署名した。イランは強く反発しており、今後、中東情勢は悪化する恐れがある。

 米国との取引に支障が出ることを恐れ、多くの企業はイランとの取引から撤退する方針を固めている。最近では、ペルシャ湾にある世界最大級の南パルス天然ガス田の一部開発契約から、仏石油大手トタルが撤退したことが明らかになっている。日本の企業や金融機関もイランとの取引停止を進めている。

 財務省の貿易統計によると、2017年の日本からの対イラン輸出額は984億円で、その4割程度を自動車関連が占めた。イランへ部品を輸出し、現地で完成車を組み立てている自動車メーカー大手は、すでに新規の受注を停止したという。今年11月からは、イラン中央銀行との取引にも制裁が科されるため、3メガバンクもイラン関連の取引をやめていく方向だ。

 原油に関しては、日本は輸入の5%をイランに依存しており、影響は避けられない。石油元売り会社は中東のほかの国から原油を代替調達し、石油の安定調達につとめる考えだ。だが、原油の種類が違うことから設備の運転にあたって、余分なコストがかかる恐れも指摘されている。

 コストの転嫁によって、1リットル=150円台と高止まりしているレギュラーガソリンの全国平均小売価格がさらに跳ね上がり、家計が圧迫されて消費意欲が冷えかねない。

 また、イランが対抗措置として、世界の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖すれば、さらなる原油価格の高騰圧力となる恐れがある。大手海運業者は陸路での輸送に切り替えるなどの対応を迫られることになり、やはり余分かコストがかさむ可能性がある。

 日本政府は米国に対し、イラン産原油の禁輸について日本企業を例外的に制裁対象から外すよう求めている。だが、米国政府は特定の国を適用除外とすることについて、慎重な姿勢を維持している。

 イラン産原油の輸入が途絶えれば、禁輸に応じない中国が輸入量を増やすことになり、安全保障上の観点からも日本にとって好ましくない。イランとの関係は断てないが、最大の同盟国・米国の意向も無視できない日本。相反する2つの立場に挟まれ、苦しい状況に置かれている。

The following two tabs change content below.