最近、ネットをチェックしていたら気になるワードが目に飛び込んできました。

 「コドモノミクス」です。

 まさにいま現在(2018/8/29)行われている国民民主党の代表選挙で、玉木雄一郎代表候補が提唱したもの。

 それは何かというと、『子どもへの投資、未来への投資を大胆に行う政策』とのこと。

そしてその代表的な施策として「第3子に1000万円給付」というものがあります。

 玉木氏の提唱、詳しくはこちら

 すごく端的にまとめてみると、

 子どもへの投資に力を入れることによって、子どもだけでなく社会全体を活性化させる戦略ということなのかなと理解しました。

 ネット等をみているとまさに賛否両論ですが、僕は率直に言ってかなり「アリ」なのではないかと思いました。

 というのも、この「コドモミクス」の戦略を先取りして徹底的に推進している兵庫県明石市では既に成果が出ているからです。

■経済成長するミラクル・シティ

 明石市は特に児童虐待対策を筆頭に児童福祉の分野で革命的な取り組み・成果をあげられていて話題を集めています。

 それについては私も以前記事にまとめたものがありますので、詳細が気になる方は是非ご笑覧ください(言論ドットコム「徹底した子育て支援はリッチな都市でしか実現できない? 明石市が覆した『常識』」)。

 泉房穂市長の強烈なリーダーシップで「やさしい社会」の実現に向けて全力で突き進む明石市。

 しかし、実は明石市は「やさしい」だけのまちではないのです。

 なんと、持続的な経済成長も実現してしまっているミラクル・シティなのです!

 私はこの明石市に都・県・区・市議会議員と視察でお邪魔しました。

 そしてなんと、泉市長ご本人から半日かけてたっぷりと明石市の取り組みについてお話を伺うという贅沢ここに極まれりな体験をしてきました。

 超ご多忙の中のこの神対応… 泉市長並びに明石市のスタッフ各位には足を向けて寝られません。

 一生分のウロコを目から出してしまったのではないかと思うレベルのお話を伺いました。

 そんなわけで、最近話題の「コドモノミクス」のエッセンスを就任当初(平成23年)から実践され、そして見事に成果を出されてきた明石市の取り組みについてまとめてみたいと思います。

 泉房穂市長自ら明石市の取り組みについてお話くださいました!

■5年連続で人口増加

 明石市がこれまで実現してきた成果は大小様々ありますが、今回は経済面に絞ってみてみます。その代表格といえるのが人口増と税収増、そして地域経済活性化です。

· 人口増

【国勢調査推計人口】

 泉市長が就任して2年後の平成25年以降、5年連続で人口が増加しており、過去最高人口数を突破している状況です。

 この人口増の特徴のひとつは大都市からの転入であること。普通この手の都市の人口増加は田舎からの流入だったりするのですが、完全に逆です。

 なお、こういう話をすると必ず「人口増っていったって他の都市から奪ってるだけじゃん。日本全体でみれば変わらないでしょ」っていうコメントがつくのですが

 明石市の場合、同市で生まれる赤ちゃんの数まで増えています。

 しかも3年連続!

【参考:明石市資料】

 子育て層の増加に、出生率の上昇がかけ合わさってこのような結果を生んでいます。

合計特殊出生率(平成28年度)

 明石市:1.64

 兵庫県:1.49

 全国:1.44

 先の人口増の図を見ていただくとわかると思いますが、他市から明石市への転入で人口が増え始めたのが平成26年。そして、赤ちゃんが生まれた数が増え始めたのが平成27年。

 つまり、

 「今のままだと難しそうだけど、明石市だったら子育て出来そう!」というふうに感じた子育て世代が移住してきて、そして実際に子どもをもうけているのです。

 それは統計にもしっかり現れていて、実際に転入者は子育て層ばかり。

 【平成25年1月〜平成29年12月:転入者から転出者を引いたもの】

【参考:明石市資料】

· 税収増

 これだけの人口増があるわけなので、ばっちり税収もV字回復しています。

 納税義務者は平成24年には130,876名でしたが、平成29年度には137,639名(+6,763名・約5.2%増!)。

 税収(個人市民税・固定資産税・都市計画税)は平成24年には342億円でしたが、平成29年度には362億円(+20億円・約5.8%増!)。

· 地域経済

 地域経済に関する統計データを見てみると…

 まず、地価がV字回復していますね。

 住宅地価格はこんなかんじ:

【参考:明石市資料】

 商業地価格はこんなかんじ

【参考:明石市資料】

 住宅需要も増加してます。

 住宅着工件数はなんと+785戸・約42%増!!!

 平成24年:1,889戸 → 平成28年:2,674戸

 商店街の賑わい(中心市街地)もすごいですよ。

 来街者は+8,490名・約43%増!

 平成27年:19,650名 → 平成29年28,140名

 いや〜、文句なしってかんじですね。

 しかし、なんでこんなことが実現できたのでしょうか。

 その答えは、子ども・子育て世代に対する大胆かつ戦略的な投資なのです!

■起点は子育て世代への投資

 明石市がここまで目覚ましい成果をあげられた要因は、下図に要約されるのではないかと思っています。

 この強力なフィードバックループがぐるぐる回っているのです。

 人口が増加し、まちが活性化して税収が増える。そうすると、行政サービスが充実する。だから、まちに対する愛が生まれる。まちを愛する市民は知人友人に自分のまちの魅力を語る。その人達は自分も明石市で暮らしたいと思う。そして…(最初に戻る)

 そして、この強力なループの起点が子ども・子育て世代に対する投資です。

 重要なポイントが2つあります。

ポイント①:大胆な投資

 泉市長就任以来、子ども関連予算に大胆な投資が行われています。

 投資なくして成長なし、というわけですね。

 平成22年には126億円だったのが、平成30年には219億円になってます(なんと約74%増!!)

 ※平成30年の一般会計は1,094億円

 ちなみに、短期的にこれだけガッツリと子ども関連予算をアップさせていますが、明石市が特別リッチな都市というわけではありません。

 むしろ、財政規模でいったら普通です。いや、むしろ同規模の自治体と比較すると貧乏なレベル。

 予算に余裕のある自治体など絶対にありません。何か新しい予算をつけるということは、別のところから予算を持ってくるしかない。

 別のところに予算を使っているということは、そのお金で助かっている人や得をしている人がいるわけで、100000000%抵抗にあいます。

 しかし「それでもなお!」といって予算を別のところから持ってくる。それをやりきらねばなりません。

 「コドモミクス」の話も、ネットで「財源はどうするんだ」みたいなコメントが散見されますが、そんなの別のところから持ってくる以外にないのです。

 問題は、本当にそれをやる覚悟があるのかということだけ。 明石市の場合は、市役所の人件費削減(職員の数を1割、200人減)や公共事業費削減(下水道整備計画に基づく予算総額を600億円から150億円に削減するなど)で予算を捻出されました。

 凄まじい抵抗があったことは想像に難くないですが、それでもやり抜かれたんですね。すごすぎる。けど、これ以外に方法はありません。

 ちなみに、これだけの投資をしていますが明石市の財政は健全そのもの。市の基金(貯金のようなもの)は、泉市長就任前までは毎年取り崩していましたが、就任以後は積立することができています。

 つまり、黒字経営です。

 ポイント②:子育て支援策には所得制限を設けない

 明石市では先に述べた子ども関連予算を活用して、様々な施策を実施してきました。代表的なものは下記の「3つの無料」です

 ●子ども医療費、中学生まで完全無料

 ●保育料、第二子以降は完全無料

 ●施設利用料、何時間遊んでも無料

 例えば… こんな感じってことですよね

参考元:明石市

 これはお得感がハンパじゃない…!!!!!!!!!!!!!!!!

 でもこの無料施策の最も重要な点は金額ではありません。

 それは、この施策に所得制限を設けていないことです。

 普通だと「なんで特に生活に困っていない子育て世帯にまで税金を投入しないといけないんだっ!!」ってなりますよね。

 だから、国の政策でもしばしばこの手の支援をするのはいわゆる貧困世帯のみだったりします。でも、それではうまくいかないんです。

 というのも、それをやってしまったら中間層(中流層)が苦しいじゃないですか。

 血税を行政にせっせと収めている中間層は、決して楽じゃない(ほんとにねっ!!!)。

 それなのに相対的に自分より貧しい人のためだからと自分たちも生活キツイのに税金ばっかりむしられて、しかも何の恩恵もなかったとしたら、そんなまちに住みたいと思うでしょうか。

 思わないですよね。

 これでは、税金を収めてくれる人がまちに集まらないのです。

 一方で、恩恵を受けられる人たちは集まってきてくれるかもしれない。

 でも、そうすると、彼/彼女らを支援するのに必要な税金の額は膨れ上がるばかりで、財源が捻出できなくなってしまいます。持続できないのです。

 だからこそ、まちの財政の主な担い手となってくれる納税者、つまり、子育て世代の中間層にこそ、最大限の行政サービスのメリットを提供する必要があります。

 泉市長のお言葉をおかりすると「所得制限を設けるのは貧困施策、所得制限を設けないのは未来施策」というわけです。

 泉市長はこうもおっしゃっていました。

 「戦略的な話もありますが、そもそも、子どもが生まれた親によって区別されるなんておかしな話やないですか」と。

■子どもへの投資が「最強」

 長くなりましたが、結局のところ自分が今回の拙いブログで皆様にお伝えしたかったことはたったひとつしかありません。

 子どもへの投資が最強ってことです。

 このことを明石市はこれ以上なくわかりやすい形で証明してくれています。

 だけど、残念ながら今の日本の社会は子どもに対する投資を他の先進国と比較して明らかに疎かにしています。

 だから私は「コドモノミクス」であれなんであれ、子どもに対する投資を志向する政策と、それを本気で推進しようとする人をめっちゃ微力ですが応援したいと思っています。

 老若男女みんなが幸せになるには、まず全ての子どもを例外なく幸せにする仕組みをつくるところから。

 これは感情論ではなくて、合理的な戦略の話なのです。

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認定NPO法人フローレンス 前田晃平

認定NPO法人フローレンス 前田晃平

認定NPO法人フローレンスで採用マーケティング担当。前職はリクルートで教育機関の広報支援と新規事業開発。慶応大総合政策学部中退。