毎年、夏を迎えると台湾を訪問する日本の国会議員が増える。総統をはじめとする高官との会談など「好待遇」で迎えてくれる台湾は、中国政府から目を付けられることを恐れない一部の議員にとって格好の訪問先と言える。

 8月上旬には超党派の国会議員団「日華議員懇談会」の古屋圭司会長ら幹部11人、中旬には自民党青年局の鈴木馨祐局長ら地方議員を含む約80人、下旬には自民党参院議員ら7人がそれぞれ訪問し、蔡英文総統と面会した。9月にも国会議員の2団体の訪問が予定されている。

 冒頭に「毎年夏」と書いたが、今年前半は例年とは異なる事態になっていた。毎年5月の連休に訪れるはずの与党の国会議員が台湾を訪問せず、野党の蓮舫参院議員らだけが訪台し、蔡総統と総統公邸で面会していた。外交関係のない日台間では、与党議員が台湾当局と日本政府との「橋渡し役」をするのが慣例だ。その与党議員が訪台しないのは異常事態。安倍晋三首相と蔡総統がSNS上で間接的にやりとりをするなど、蜜月ぶりが演出されている日台間だが、その足下では関係の空洞化が進みかねない状態だった。

 原因は、安倍政権が東日本大震災の復興の象徴とみなす福島県など5県の食品の輸入解禁が一向に動かない上、蔡総統が日本の議員との面会に消極的だとの受け止めが日本側に広がったことにある。英米への留学経験がある蔡総統は、欧米からの来客には積極的に会うものの、日本からの来客は陳建仁副総統に任せる傾向があった。国民党の馬英九前総統は時に「反日的」と評されることはあっても、訪台する日本の国会議員はほぼ全員と面会していた。「それと比べて蔡総統は・・・」と日本側が思っても不思議はない。一般的に民進党政権は「親日的」だという思い込みも逆に作用しただろう。

 今夏になり、蔡総統が積極的に日本の議員と面会するようになった理由は不明だ。日本側の不満が間接的に伝わったか、10月に日中平和友好条約の発効40年を迎えるにあたり、日中関係の改善ばかりが注目され、日台関係が置き去りにされるのを避けたい思惑があるのかも知れない。

 一方、多忙な蔡総統にとっても、日本の議員との面会は、形式的な「日台友好」を再確認する場ではないはずだ。台湾はたびたび米国抜きの環太平洋経済連携協定(CPTPP)への加盟表明をしており、日本への支援を強く求めている。呉釗燮外交部長(外相)は最近、一部日本メディアとの会見で、中国からの軍事的な圧力に対抗するため日本との安全保障対話を求める発言をした。日台関係が非政府間の関係であることを考えれば、かなり「高めのアウトコースの球」だが、日本側が非公式に応じていれば、表に出さなかったであろう発言でもある。

 台湾当局は訪台した米議会議員を手厚くもてなす。例えば、蔡総統は2017年9月、エド・ロイス米下院外交委員長(共和党)に、海外の政治家に贈る最高位の勲章を授与した。こうした厚遇は、彼らが議会内で台湾を支持する決議案を出したり、最終的に削除されたりはしても、台湾に有利な条文を法案に加えるよう目に見える努力をした見返りである。ひるがえって、日本の国会議員は訪台時にリップサービスをする以上の何かをしているだろうか。台湾が日本の議員に期待するのは、台湾当局や台湾の住民が目で見て、肌で感じることができるような具体的な台湾支援の行動なのだ。

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言論ドットコム編集部

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