財務省は9月7日、8月31日に締め切った各省庁からの2019年度一般会計予算の概算要求額が102兆7658億円になったと発表した。2016年度の要求額(102兆4099億円)を上回って過去最大で、総額が100兆円を超えるのは5年連続。高齢化で社会保障費が大きく伸びるほか、北朝鮮対応で防衛費も膨らんだ。12月末の政府予算案編成に向け、財政再建を重んじる財務省はできるだけ金額を削りたい考えだが、不祥事続きで「萎縮している」(自民党幹部)ため、与党が強める歳出圧力をはねかえすのは容易でなさそうだ。

 2019年度予算の概算要求額が大きくなった最大の要因は、社会保障費の膨張だ。社会保障費の大半を所管する厚生労働省の要求額は31兆8956億円で、全体の約3割。年金、医療、介護といった費用が増えるほか、働き方改革関連法が2019年4月から順次施行されるのに備え、中小企業や零細企業への支援を手厚くした。

 また、防衛省の要求総額が過去最大の5兆2986億円に上った。北朝鮮による弾道ミサイル発射への迎撃態勢を強化し、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」本体2基の導入費などが盛り込まれた。

 経済財政運営の指針「骨太方針」や成長戦略に盛り込まれた重点施策に配分する「特別枠」の要望も4兆3175億円と、記録のある2011年度以降で最大に。概算要求とは別枠で、2019年10月の消費税増税に備えた景気対策も盛り込まれる。今年12月にまとまる政府予算案は、当初予算として初めて100兆円を超える公算が大きい。

 要求を査定する財務省は、財政健全化の観点から極力予算を削りたい考えだ。年末に向け、できるだけ予算を認めて欲しい各省庁や与党と折衝を続ける。

 予算編成のポイントの1つは、社会保障費の抑制だ。とくに、概算要求で2018年度比6000億円だった、高齢化などによる社会保障費の自然増分を、年末の編成で、どこまで押さえ込めるかが焦点になる。

 ただ、2018年度予算まで設けられていた「自然増分を年5000億円まで抑制する」という数値の目安は、2019年度は設けられなかった。財務省は4000億円台まで抑えたい考えだが、与党や厚生労働省が、高齢者に痛みを強いる歳出削減を丸々許す可能性は、非常に低い。

 ただでさえ、前次官による女性記者へのセクハラ問題や、学校法人「森友学園」に絡む決裁文書改竄問題で、財務省は猛烈な批判を受けている。折衝過程で強い態度に出る〝元気〟はない。結局、財務省が押され、社会保障費の抑制額は小さいものに収まる可能性がある。

 ちなみに、国を問わず、社会保障費の削減は、時の政権にとって非常に難しい問題だ。プーチン大統領が君臨するロシアでも9月9日、政府が決めた年金支給年齢の引き上げに反発する大規模な反政府集会が、数十の都市で開かれた。これまでに爆弾テロも起こり、プーチン氏の支持率は下がっているという。国民を〝恐怖〟で統制しているはずのロシアでのこうした現状は、社会保障改革への国民の反発がいかに強いかを物語っている。

 もっとも、日本の財政は危機的状況にあり、改革は待ったなしだ。国債などの政府債務は1000兆円を超え、先進国で最悪水準。今は金利が低いが、将来、何かの拍子に金利が上昇すれば、返済負担が大きくのしかかってくるのは間違いない。

 公共事業などの政策経費を借金に頼らずまかなえているかを示す指標「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」黒字化の達成時期目標も今年6月、従来の20年度から25年度へと5年先送りした。財政再建は遅れるばかりだ。「財政の番人」は意地を見せられるのか。不祥事続きで信頼が失墜した財務省の真価が問われている。

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