トランプ米大統領が通商分野で日本に〝牙〟を向き始めている。9月6日、トランプ氏は「中国などに続く次の貿易交渉相手は日本」であることを示唆したと米紙が報道。7日には日本との貿易協議で市場開放に合意できなければ「大きな問題が生じることを日本も理解している」と話した。米国は今月下旬に予定される新たな通商協議(FFR)や首脳会談で農業分野での市場開放を迫ってくる可能性も指摘されており、日本は緊張感のある協議を迎えることになりそうだ。

 「日本が支払わなければならない金額の大きさを伝えれば、これまでの関係は終わるだろう」

 トランプ氏の「新たな提案」は、米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版のコラムが6日、伝えた。少し分かりにくい発言だが、「米国が日本に対して抱える巨額の貿易赤字の削減が進まなければ、日米の良好な関係が終わる」と言いたかったとみられる。

 さらにトランプ氏は7日、大統領専用機内で記者団に対し、これまで日本に圧力を加えてこなかったのは「中国の問題に取り組んでいるからだ」とコメント。「日本とは協議に入った」とも述べ、2国間でなんらかの合意に達することに期待を示した。

 日米は、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表がFFRの第2回協議を21日に行う方向で調整している。米国側は、自動車と関連部品の輸入制限もちらつかせながら、2国間での自由貿易協定(FTA)を念頭に、農産物の市場開放などを迫るとみられる。

 トランプ氏が突然、対日強硬姿勢に転じたのは、11月の中間選挙に向け、国内の支持をより強固で確実なものにしたい狙いがあるとみられる。米国が貿易赤字を抱える相手国を〝敵〟に見立てて攻撃し、支持者の喝采を浴びるのはトランプ氏の常套手段だ。

 トランプ政権はこれまで鉄鋼の輸入制限を発動したり、自動車への追加関税を示唆したりしながら、欧州連合(EU)との貿易協議や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、ある程度の譲歩を勝ち取ってきた。中国に対しても、知的財産権侵害を理由とした追加関税を発動するなど、〝敵〟を叩く姿勢をどんどん強めている。

 日本に関しては、米国は2国間でのFTAに持ち込みたい考えだが、日本は多国間の交渉を重視しており、11カ国で合意した環太平洋経済連携協定(TPP)に米国を引き戻したい方針だ。日本は米国の対日貿易赤字を削減するため、防衛装備品や液化天然ガス(LNG)の米国からの輸入を増やすことを検討している。

 日本はFFRだけでなく、麻生太郎副総理兼財務相とペンス米副大統領の間での日米経済対話や、安倍晋三首相とトランプ氏の首脳会談でこうした方針を主張していく考えだ。ただ、ある交渉関係者は「いくら安倍氏とトランプ氏がゴルフする仲だとはいえ、選挙を前にしたトランプ氏を軟化させるのは難しいだろう」と悲観的な見方を示す。

 一方、日本では「トランプ氏の目的は中間選挙で勝利することなので、中間選挙が終われば、日本への圧力を弱めるのではないか」という観測も根強い。だが、前出の交渉関係者は「その見方は楽観的すぎる」と指摘する。

 というのも、2017年1月に就任したときのトランプ氏は政治・外交の手腕が疑問視され、1期4年しか持たないとの見方が強かったが、貿易交渉で〝実績〟を重ねたことで人気が高まり、「2期目の再選も可能だ」との見方が米国内で強まっているからだという。トランプ氏自身も再選に意欲を持ち始めたとされる。

 となれば、トランプ氏が日本を含めた各国への圧力を弱める理由はなく、再選に向けますます圧力を強めていく可能性が高い。日本政府は、神経をすり減らす日々が続きそうだ。

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